2020年12月28日月曜日

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)を読んだ。

 我々の思考は、全部レトリックです。難しい抽象概念も、身の回りの比喩から積み上げていって理解しているのです。例えば、論理は食べ物。論理を味わい、咀嚼し、消化し、あるいは口に合わず、アレルギーを起こす。また例えば、議論は戦い。論陣を張り、不意打ちしたり、罠を仕掛けたり、丁々発止と渡り合ったり。

 また我々は、新しい比喩を創り出すこともできます。それは物事を新しい側面から眺めること。新しい比喩が概念体系に入り込めば、行動も変わる。つまり新しい比喩は、新しい現実の創造でもあるのです。

2020年12月24日木曜日

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)を読んだ。

 面白い。ていうか面白すぎる。いいですか、我々の千倍も兆倍も頭がいいAIが、2045年には誕生する! いや、その「頭がいい」って何ですか? そりゃ人間を兆倍も優秀にしたものですよ! ちょっ、ちょっと待ってください。

 コンピュータの処理速度も、脳スキャン装置の解像度も、倍々ゲームで進化しています。もはや脳の複雑さは処理可能な範囲です。だったら脳をリバースエンジニアリングして、クロック数は兆倍じゃい。そして我々はナノテクノロジーで銀河系を制覇する。本当にそう書いてあるんです。

2020年12月23日水曜日

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)を読んだ。

 いいね!を押せば、性格が漏れ出す。いいねが150個あれば、性格(ビッグファイブ因子)を家族と同じくらい正確に予測できます。いいね千回超? もはやあなたを一番知ってるのはfacebook。

 ソーシャルメディアは情報の質よりも、クリック数やシェア数など広告収入につながるものを高く評価する仕組みになっています。しかし、「ユーザは個人情報を差し出し、プラットフォームはターゲティング広告で儲けるというビジネスモデルが、情報生態系の持続的発展に利するのかどうか考え直す時期にきている」

2020年12月22日火曜日

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)を読んだ。

 前から読みたかったヒュームに挑戦してみた。さすが古典、自分の頭で考えるのはこういうことかと思ったことでした。一ノ瀬正樹解説も面白いです。

 ヒュームによれば、知識は、アプリオリな理論によって得られるのではありません。ある出来事に続いていつも別のある出来事が生じる(恒常的な連接)のを見いだすという経験によって得られます。しかもこれは一種の自然的本能であって、人間に特別なものではない。ヒューム曰く、犬も知識を有する。理性も自然の一種であって、何か別の抽象世界の産物ではないのです。

2020年12月9日水曜日

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)を読んだ。

 キリスト教、ユダヤ教は特異な宗教です。なんとご利益がないのです。

 古代では民族の戦いは神の戦いでもあり、民族が負ければその民族の神も捨てられ消えるのが普通でした。ところがユダヤ民族では、南北王国のうちまず北王国のみが滅亡したため、ヤーヴェが捨てられませんでした。そして神が守ってくれなかったのは、神の力が足りなかったのではなく、民に罪があったためである、とされました。その結果、「神の意が分からなくとも、どんなに悲惨な状態になっても、神を捨ててはならない」となったのです。

2020年12月7日月曜日

『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)

『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)

 『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)を読んだ。

 超面白い。中世では価格は常に一定でした。ではいったい、どこから資本主義が現れたのでしょう。王様と商人? 職人ギルド? 都市市場? ブー。正解は農村。奢侈品は余剰を分配するだけで生産力を上げませんし、ギルドや市場では他の構成員より多く儲ける奴は排除されました。目立たずに少しずつ効率化することができた農村内商工業こそが、生産力を上げたのです。

 設計されたユートピアや伝統復古は、実現できたことがありません。理念やニュースなんて重要じゃない。目立たない日常こそが歴史を変えるのです。

2020年11月26日木曜日

『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者』(マーシャ・ガッセン)

『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者』(マーシャ・ガッセン)

『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者』(マーシャ・ガッセン)を読んだ。

 超面白い。数学の記念碑的難問「ポアンカレ予想」には、賞金1億円がかけられました。それを辛苦のすえ証明したペレルマンは、しかし賞金もフィールズ賞も拒絶し、隠遁してしまいました。なぜ。

 「我々の社会でエリート教育は許されない」という旧ソ連に、奇跡的に残された数学アカデミーで育ち、数学の純粋さを信じるペレルマンには、数学と金や賞は、結びついてはならないものだったのです。数学は数学のためにある。この世で数人しか理解できなくても、正しい数学は正しい。分かりやすいなんて、低俗なことだ。

2020年11月24日火曜日

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)

『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)


『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』(ジェイミー・バートレット)を読んだ。

 超面白い。2017年米国でロビー活動に最も金を出したのはどの会社? トランプのSNS選挙対策室でケンブリッジ・アナリティカ(個人情報を使う選挙コンサル)と協働したのはどの会社? 答えはGoogle。昔ならプロパガンダと呼ばれた手法をテックで洗練し、時価総額は50兆円を超え、もう既に、権力なのです。

 しかしテック企業は自分を権力側と思っていません。それは彼らの「カリフォルニアン・イデオロギー」。つまりテックの本質は人を解放すると信じているからです。そろそろ無理があるでしょう。

2020年11月9日月曜日

『江戸の読書会 会読の思想史』(前田勉)

『江戸の読書会 会読の思想史』(前田勉)

 『江戸の読書会 会読の思想史』(前田勉)を読んだ。

 超面白い。江戸の会読には、カイヨワの言う「遊び」、アゴーン(平等のチャンスが人為的に設定された競争)とルドゥス(あえて窮屈なルールで困難を解決する喜び)がありました。ていうかそれってまさに、ビブリオバトル!

 儒学も蘭学も権勢や利得に直結しませんでした。これが逆に「貴賤富貴を論ぜず、同輩と為すべき事」(懐徳堂=大阪商人の学問所)となったのです。杉田玄白は『解体新書』訳業の思い出に、「会集の期日は、前日より夜の明くるを待ちかね、児女子の祭見にゆくの心地せり」。なんと素晴らしい。

2020年10月29日木曜日

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』(フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー)

#ハヤカワノンフィクション文庫


『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』(フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー)を読んだ。

 評論家や諜報員の予測が、猿のダーツ投げより的中しない。そんなんでいいのか。そこでガチンコ、予測トーナメント開催です。結果、ボランティア(年間3万円ギフト券)の一部「超予測者」は、高給取りのCIA情報分析官より予測力が高かったという…。超予測者の特徴は、思想信条に縛られないこと、運命論を信じないこと、数学と読書が好きなこと。

 予測力、実に高めたい。でも本当は、10年先の変化を見通すことは「絶対に」できない。予測力や知的柔軟性には価値がある。しかし人の予測には限界があるのです。

2020年10月22日木曜日

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)を読んだ。

 答えよりも、問いのほうが重要です。例えばドラッカーは企業に助言するとき、何をすべきかの答えを示すのではなく、質問を投げかけ、どういう問いが重要かを明確にすることで実績をあげました。

 対して普通の専門家は、答えを与えるのが役割と思ってます。ちなみに私も思ってます。「どうしてあなたは自分が専門家より分かっていると思うのですか?」とか言い出しかねませんが、これへの返しは「確かに知っていることは少ない。だがその方がいいこともある」。専門家の答えだけでは新しい解決は生まれないのです。

2020年10月12日月曜日

『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)

『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)

 『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)を読んだ。

 超絶面白い。社会と個人とはどのような関係にあるか。問いが骨太すぎる。

 社会と個人が存在し、相互に影響する、では甘すぎます。例えば心理実験で我々は、強い被害を受けている人と弱い被害を受けている人を見ると、強い被害を受けた人を低く評価する傾向があります。これは単に無情だとか、認知バイアスだとかでは済まない。悪い人が悪い目に遭う、世界は概ね公正だ(公正世界仮説)、という心理がなければ、社会は成立しない。社会は個人から構成されますが、個人心理の底には社会があり、円環で一体なのです。

2020年9月17日木曜日

『レトリック感覚』(佐藤信夫)

『レトリック感覚』(佐藤信夫)


『レトリック感覚』(佐藤信夫)を読んだ。

 超面白い。太宰治曰く、「ふと入口のほうを見ると、若い女のひとが、鳥の飛び立つ一瞬前のような感じで立って私を見ていた」。その比喩、わかる。けど、鳥の飛び立つ一瞬前を見たことありますか。『雪国』のヒロイン、「駒子の唇は美しい蛭の輪のように滑らかであった」。わかる。けど、蛭を見たことありますか。

 しかし、愛する人の唇を伝えたいとき、美しいと書いても、形を正確に描写しても、伝わりません。言葉は伝達に便利ではない。レトリックは飾りではなく、切実なことを正確に伝えるための本質なのです。

2020年9月15日火曜日

『日本のいちばん長い日』(半藤一利)

 『日本のいちばん長い日』(半藤一利)

『日本のいちばん長い日』(半藤一利)を読んだ。

 超面白い。敗戦日とその前日、皇居ではクーデター(宮城事件)が起きていました。若き陸軍部将校 畑中少佐らが、近衛第一師団長を殺害し、皇居を占拠して、本土決戦のため、玉音放送を阻止しようとしたのです。しかし未遂に終わり、畑中は自決。鈴木貫太郎首相の飄々とした肝の太さ、敗戦を遂行する内閣の辛苦など、24時間実録がスリリングです。

 絶対に負けを認めないぞ。そんなのは子どもの所行と、後世から言うのは簡単ですが…。浪漫主義はたやすく除霊できない。この本が面白いのが、まさにその証拠です。

2020年9月12日土曜日

『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)

『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)

 『「壁と卵」の現代中国論 リスク社会化する超大国とどう向き合うか』(梶谷懐)を読んだ。

 昔、人の敵は自然でした。近代に至り、自然を克服したテクノロジーやシステムは、基本的には良いことのはずです。しかしテクノロジー等は、一部に害を与えることがあります。例えば公害や薬害です。このように人から生じるリスクの配分が問題となる社会(リスク社会)では、ある意味リスクを人が割り振るのですから、自由な異議申立と論議が重要です。

 ここで中国。中国はリスク社会に至っているのに、いまだに言論統制をしています。そのやり方、もうもたないでしょう。中国の深い認識が得られる本、お勧めです。

2020年9月9日水曜日

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)

 『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴)を読んだ。

 面白い。2000年米国大統領選、当初世論調査ではゴア有利も、ラルフ・ネーダーが立候補してゴア票を喰い、ブッシュが当選しました。多数決は票の割れに弱い。また選択肢が複数だと、二番になりやすい穏当な主張よりも、嫌われても一番を目指す極端な主張が勝ちやすい。実際、欠陥制度ではないか。選択肢を順位づけして投票する(ボルダルール)なら、極端は敗れます。


 住民投票の工夫も出色。計画の実質確定後に住民意見を聞くセレモニーをするのでなく、しかも地域エゴや愉快票を避ける制度がありうるのです。

2020年9月7日月曜日

『新 人が学ぶということ 認知学習論からの視点』(今井むつみ、野島久雄、岡田浩之)

『新 人が学ぶということ 認知学習論からの視点』(今井むつみ、野島久雄、岡田浩之)

『新 人が学ぶということ 認知学習論からの視点』(今井むつみ、野島久雄、岡田浩之)を読んだ。

 超面白い。知識の獲得には、豊富化と再構造化があります。このうち学習の躓きとなるのは再構造化。再構造化のために、今持っている素朴理論を捨てるのが難しいのです。例えば、分数を理解するには、数=自然数という素朴理論を捨てなければなりません。また例えば、指で上へ弾かれたコインには、上がる途中の瞬間、上向きの力が働いていますか?「動いてるなら動いてる方へ力が働き続けてる」は素朴理論で、慣性の法則に反し、誤りです。

 いいね、再構造化。何もかも次々に再構造化して、まだ見ぬ世界へ行きたい。

2020年9月5日土曜日

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(ジョン・ロンソン)

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(ジョン・ロンソン)

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(ジョン・ロンソン)を読んだ。

 超面白い。ジャスティン・サッコは人種差別的ジョークを1回ツイートしました。これが半日後には世界一の大炎上、即日解雇され、名前を検索すれば顔写真と人格非難が延々と続き、今後一生涯、普通に就職や子育てをすることはできないでしょう。

 炎上は特殊な人の悪意のせいではない。逆です。普通の人の善意のせいです。悪い奴を懲らしめるのは当然? いや、その場の思いつき、ていうか本当は暇つぶしを、正義だと心理的に正当化しているだけでしょう? そして現実には、人の生涯を潰すのに荷担しているのです。

2020年8月31日月曜日

『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)

 『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)


『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)を読んだ。

 予想外、ちゃんとしてない。新卒入社しても行かない。新婚すぐ愛人と有馬温泉に泊って離婚、等々。宝塚歌劇は三越少年音楽隊との競争上の「イーヂーゴーイングから」「元来私は音痴である」。なんでそんなこと自伝に書くの。

 しかし彼の理想と事業こそが、中産階級を生みました。欧州旅行の感想に、「〔デモクラット発祥の地は〕さぞ大衆の芸術も盛んで立派であろうと考えて行って見ると、…芸術はブルジョワの手に独占され…、民衆のためには、単に富籤、犬のレース…。これで健全な大衆の成長があるだろうか」。


2020年8月21日金曜日

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、他1名)

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー)

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー)を読んだ。

 儒教老荘、面白い。孔子曰く、「祭ること在(いま)すが如くし、神を祭ること神在すが如くす」。つまり儀礼は「かのように」行う。

 孔子曰く、人間関係の本質は儀礼です。例えば、夫婦が愛している「かのように」言葉を交わしているとき、まさに、お互い愛しあっているのにほかなりません。逆にうまくいかない関係は、コミュニケーションがダメなパターンに嵌まっています。口うるさい母と反抗的な子というパターンとか。そんなときには、ダメでない「かのように」。ダメなパターンを打破することができるのです。

2020年8月12日水曜日

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)を読んだ。

 超面白い。綱吉のファンになること必定。綱吉の評判が悪いのは、武士に嫌われたから。武士に嫌われたのは、儒教的仁政を理想とし、庶民を重視したから。その庶民重視の根は、当時の武士では例外的に母の影響を強く受け、母は八百屋の娘だったからです。

 また綱吉は中央集権を志向しました。家柄より能力で登用し(柳沢吉保等)、西洋史ならルイ14世風の絶対君主を目指しました。生類憐れみの令は、鷹狩りの縮小で大名が捨てた等の野良犬が十万匹も群れる江戸で、五代将軍綱吉と戦国的武士との衝突だったのです。

2020年8月2日日曜日

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)を読んだ。

 パラダイム転換、面白い。読む前はポストモダン的というか、科学者は集団のルール内で考えるだけだ的な本かと思ってましたが、違いました。

 確かに、「チェスの問題を解こうと苦心する人は、チェスのルールについて考えない」としています。しかしむしろ、その解こうとする苦心、パラダイム内での通常科学こそを、科学の長所と評価しています。ルールの転覆(まさにコペルニクス)は外野からは目を引きますが、そもそも転覆が可能になるのは、つまり異常に気づくのは、通常科学による蓄積があるからこそなのです。

2020年7月22日水曜日

『上達の法則 効率のよい努力を科学する』(岡本浩一)

『上達の法則 効率のよい努力を科学する』(岡本浩一)

『上達の法則 効率のよい努力を科学する』(岡本浩一)を読んだ。

 かなり面白い。スポーツ、演奏、将棋、武道、何でもいいから上達したくなること必定。例えば、中級者に上がるコツはまず得意技を見つけること等、私の数少ない上達経験からも納得です。

 上達の秘訣は、情報処理にあります。人が短時間内に処理できる情報は7つ程度にすぎませんが、ある技能、ある戦法、ある感覚を、ひとまとまりのもの(スキーマ)として自分の心内で把握できていれば、情報処理に余裕が生まれ、上のスキーマも見えてくる。上達巧者はスキーマ形成がうまい。メモで言語化を試みるのもお勧めです。

2020年7月10日金曜日

『プログラムはなぜ動くのか 知っておきたいプログラミングの基礎知識』(矢沢久雄)

『プログラムはなぜ動くのか 知っておきたいプログラミングの基礎知識』(矢沢久雄)

『プログラムはなぜ動くのか 知っておきたいプログラミングの基礎知識』(矢沢久雄)を読んだ。

 皆さんご存じですか。パソコン、実は、物理的な存在だった。IC(ゲジゲジみたいなやつ)の足の1本1本のオンオフが、2進法の1桁を表すと。つまり8本足のICなら、オンオフで2の8乗=256通り表せると。これが8ビット=1バイトと。そんな物理的な。いやもちろん、知ってましたけど。

 CPUもメモリもICですが、CPUが演算したり、メモリがデータを格納したりする具体的なやり方(ぜんぶ2進法かつ物理的)が分かりやすい。いや、この本はいいですね! ブラックボックスが開く快感があります。

2020年6月22日月曜日

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ)を読んだ。

 べらぼうに面白い。スケールが大きい。あらゆる革命や思想を相対化。上から目線をさらに超えた、神から目線です。読了するとしばらくの間なにを聞いても、「人類全体の歴史から見れば、小さい小さい」と思えるという効果あり。神から目線、あなたも手に入れてみませんか?

 後半の「幸福」の検討は比類がありません。著者はどんな理念体系へも超上から目線ですが、そんななか唯一、幸福のために有望視している考え方があります。それは原始仏教。これを読んで私は思いました。とうとう来た。やっぱり原始仏教だと。

2020年6月16日火曜日

『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ 生産性を上昇させる社会』(ジョセフ・E・スティグリッツ、ブルース・C・グリーンウォルド)


『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ 生産性を上昇させる社会』(ジョセフ・E・スティグリッツ、ブルース・C・グリーンウォルド)

『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ 生産性を上昇させる社会』(ジョセフ・E・スティグリッツ、ブルース・C・グリーンウォルド)を読んだ。

 超面白い。ここ二百年で人類の暮らしが格段に良くなったのは、ラーニングのおかげ。特に職場での着実な改善のおかげです。

 自由市場は理論上、世界の富を最大化しないとの指摘が刺激的。リカードの比較優位説は、各国が国内で最も得意な分野に注力したうえ自由貿易すれば世界の富が最大になるとしますが、これが本当なら、米国も日本も韓国もずっと農業国だった方が世界の富が多かったのか。これはラーニングを無視した立論です。工業はラーニングが生じやすいため、ある種の工業保護は、世界の富を増やすのです。

2020年6月9日火曜日

『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』(ジョシュア・フォア)

『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』(ジョシュア・フォア)

『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』(ジョシュア・フォア)を読んだ。

 超面白い。登場人物、展開、理論どれも見事。記憶力は才能だけではありません。例えば、秀才でも野球のルールを知らなければ、凡人の野球好きより、試合展開を覚えられません。つまり記憶力は、思考枠組みと訓練によるのです。あるいは、知識と知恵は鶏と卵。もっと覚えればもっと知り、より知ればより覚えるという。

 ちなみに最近毎週日曜、長男と妻と百人一首暗記対決をやってみたら、百首全て暗記できました! ですので次にお会いしたときには、私に下の句を、聞かないでください。そっとしておいてください。

2020年6月8日月曜日

『鮭鱸鱈鮪 食べる魚の未来 最後に残った天然食料資源と養殖漁業への提言』(ポール・グリーンバーグ)

『鮭鱸鱈鮪 食べる魚の未来 最後に残った天然食料資源と養殖漁業への提言』(ポール・グリーンバーグ)

『鮭鱸鱈鮪 食べる魚の未来 最後に残った天然食料資源と養殖漁業への提言』(ポール・グリーンバーグ)を読んだ。

 ああ天然の鮭鱸鱈鮪。旨い。しかしその漁の持続可能性は、努力にもかかわらず厳しいです。そこで養殖。お勧めは混合養殖、養殖環境の中で生態系のバランスを取るものです。例えば中国では昔から、鯉の養殖は養蚕とセットでした。桑を蚕が食べ、蚕を鯉が食べ、鯉の糞が桑の肥料になるという寸法です。

 養殖向け魚種の探究も重要です。例えばバラマンディ(熱帯域の巨大魚)は、植物食だけでも育つため、飼料効率がよく汚染も少ない。トラ(ベトナムの鯰)は驚くべき繁殖力で、面積あたり鱈の50倍も養殖できます。

2020年6月6日土曜日

『生物から見た世界』(ヤーコプ・フォン・ユクスキュル)

『生物から見た世界』(ヤーコプ・フォン・ユクスキュル)

『生物から見た世界』(ヤーコプ・フォン・ユクスキュル)を読んだ。

 マダニから見た世界はこんな感じ。マダニは木の枝にいて、酪酸の匂いがすると枝から落ち、哺乳類の体温がすれば吸血します。数年間でも酪酸の匂いをただ待ちます。つまりマダニは、人間とは違う時間にいる。

 生物は、棲む世界(環世界)と一体です。環世界で標識となることが生じると、生物はそれを知覚し、運動し、運動により環世界が変化し、さらに標識となることが生じる。生物と環世界はループとして一体です。この世にあるのは生物の数だけの環世界。そして客観的世界は、永遠に認識されえないというのです。

2020年5月26日火曜日

『読書の歴史 あるいは読者の歴史』(アルベルト・マングェル)

『読書の歴史 あるいは読者の歴史』(アルベルト・マングェル)

『読書の歴史 あるいは読者の歴史』(アルベルト・マングェル)を読んだ。

 ただの通史ではない。黙読の歴史、蔵書収集の歴史、図書分類の歴史など、お好きな方にはたまらない渉猟ぶり。古今東西、異様に博識です。

 例えば朗読会の歴史。古代ローマでは頻繁に開催され、自作の出版への第一歩になっていました。朗読を聞かない客に怒り、出版で名が売れたと喜ぶ小プリニウスが、わりとかわいいです。近代英国、朗読会の花形はディケンズで、演技や感情に頼らずに想像を喚起させる巧者だったとか。キューバは独立前夜、工場労働者に朗読会が広まるも、団結を恐れた政府はこれを弾圧しました。

2020年5月21日木曜日

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)

『ダーティ・シークレット タックス・ヘイブンが経済を破壊する』(リチャード・マーフィー)を読んだ。

 タックス・ヘイブンに関わる専門家は「全て合法に行っています」と言い、にわかに信じがたいわけですが、本書曰く、合法違法など実は大した問題ではない。秘密主義こそが問題なのです。

 経済学者はどんなに右寄りでも市場が働くには情報開示が必須としています。秘匿は市場を毀損し、経済を破壊します。

 法人にプライバシーなど大した問題ではない。法人は法人名義の財産の限度でしか責任を負わないのに、財産収支も隠すのは、責任と釣り合わず、信用の対象がなくなります。秘匿は信用を縮小し、経済を破壊します。

2020年5月15日金曜日

『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)

『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)

『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)を読んだ。

 統計からの予測によれば、寿命は100年に延びるでしょう。そうなったらどうなるか。学習して、仕事して、引退するという三段階は崩れるでしょう。若い頃の勉強で一生をもたせるのが難しくなるためです。定年後も長すぎますし。

 「変身資産」が面白い。人生が長ければ、一度くらいは大変革に直面するでしょう。活動する分野を変えたり、学習に戻ることもあるでしょう。そのとき、自分にとって本当に大切なのは何か、得意なのは何かを理解していることは財産なのです。自分の人生を遠景から見たい時、お勧めです。

2020年5月10日日曜日

企業内読書会のススメ

企業内読書会のススメ


 企業にこそ、読書会を強くオススメします。


 職場での交流が減少しています。職場に深いつきあいを求める人は大幅に減っています(NHK放送文化研究所)。従来型の飲み会によるコミュニケーションは避けられつつあります。

 しかし、職場でのグッドアイデアは雑談などの知的交流から生まれます(『イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則』71-73頁)。また、職場で精神的な支援を行っているのは、上司や先輩ではなく、圧倒的に同輩・同期です(中原淳『職場学習論』61頁)。つまり、同輩・同期の絆は、会社にとっても財産なのです。


 そこで、若手社員の間に絆を築く、知的交流の場として、若手社員向け読書会を提供します。


 読書会は、まさに知的交流そのものです。また、読書会ではお互いの考え方の特徴を自然に知ることができますので、絆が深まります。従業員が行う懇親会に補助費を出す企業が増えていますが、読書会のほうがより有意義です。


 【読書会の様子】


読書会の対象・方式

ア 読書会参加者

 若手社員またはそれに類するグループ、1回あたり8名程度

イ 開催頻度・時間・場所

 1ヶ月に1回、平日夜 読書会1時間30分(その後の懇親会1時間程度)

 飲食店営業許可取得済みのレンタルスペースで開催

ウ 提供方式

 参加は業務時間外の任意とし、福利厚生費として企業から参加費の一部を補助


読書会の詳細

 読書会には、①推薦型(参加者各々がお勧めの本について語る)と、②課題本型(課題とされた本を参加者が読んで集まり、様々な読みを語り合う)があります。

 それぞれに長所短所あり、①推薦型の長所は、好きに本を選べて強制感が出にくいこと、短所は、読みっぱなし、紹介されっぱなしになりやすいことです。②課題本型は逆に、本が指定され強制感が出やすいですが、読みっぱなしにはなりません。

 ハイブリッド型

 わたしが行っている読書会は、①②を交互に行うハイブリッド型です。運営者の経験によれば、このスタイルで①②のおいしいとこ取りができます。

 奇数回は、推薦型です。設定したテーマ(例えば、「流通」「医療」「現代中国」「進化論」等々)について、参加者がそれぞれお勧めの本を持ちより、1人5分間で紹介・推薦します。その後、その中から一冊、「いちばん読みたくなった本」を、参加者同士の投票で選びます。

 偶数回は、前回選ばれた本を課題本とした読書会です。1人5分程度で自分が感銘を受けた部分を引用しながら話し、その後、互いに読みを語り合います。

 本の対象は、新書(岩波新書、中公新書、講談社現代新書その他)に限定します。新書なら、読書量が多くない新入社員でも読めますし、読書家でも満足できます。紹介される本のレベルや方向性が揃うため、ハイブリッド型が可能になります。

 (なお、読書会の詳細は、参加者の特性を見ながら柔軟に対応します。)


読書会後

 読書会後には、食事とドリンク(アルコール含む)を提供し、若手社員の間の懇親を深めます。

 読書会で出た意見は、運営者が文書としてまとめます。記録に残すことによって、読みっぱなしにせず、知的な共有資産とします。

 読書会を1年程度続けた後には、社内イベントなどで「新入社員から本の紹介」を行ったり、社内報に顔写真付きで本の推薦文を載せるなど、企業への定着のための施策も行えます。

 【読書会後の様子】


料金

 参加者負担額:3,000円(飲食費込)

 企業負担額:(3,000円×参加者数)+12,000円


最後に

 近時の若手社員は学習への意欲が高く、勉強会なども一般的です。例えば『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(豊田義博)232頁には、「社外の勉強会に参加したことがある若手世代は、調査した人数全体の3割近くいました」とあります。社内でもこの意欲に応えるべきです。

 ルールや土俵が明確な競争環境が消えつつあり、単に頑張るだけでは成果が出にくい状況になっています。求められているのは、深い思索です。私は、このような状況に、単なる娯楽でない読書の習慣、また、同輩・同期との気心の知れた絆がぜひとも必要であると、強く思っています。


 若手社員の間に絆を築く、知的交流の場として、読書会をぜひご活用ください。


【連絡先】

tatsuya_wakita@yahoo.co.jp

ご紹介 「情報収集入門」

 わたしが過去に行った講演、「情報収集入門」の冒頭を公開しています。
 下記をクリックしますと、スライドショーが始まります。ご覧ください。

2020年5月9日土曜日

読書会紹介


大阪で読書会を開催しています。   
現在は、新書(岩波新書・中公新書・講談社現代新書ほか、各社新書レーベル)限定で行っています。     

雰囲気はなごやかでざっくばらんです。  
参加者は会社員・学生の方々、人数は毎回8名程度です。 
テーマについて深く、かつ多様に考えることのできる読書会としたいです。  

【進め方】
奇数回と偶数回で異なります。

奇数回は、参加者それぞれがおすすめの新書を紹介する、紹介型の読書会です。ビブリオバトルのルールに従ってやってます。発表でも投票のみでも参加可能です。ビブリオバトルについてはこちら

偶数回は、前回紹介された本の中から選ばれた1冊をみんなで読む、課題本型の読書会。読んで感銘を受けたページを指摘しながら、自分の読みを概ね5分ずつ語る(短くても可、パスも可)、というような形でやってます。

【今までのテーマ】
第1、2回のテーマは「情報」
第1回で発表された本は、
 『太平洋戦争日本語諜報戦』(武田珂代子、ちくま新書)
 『未来をつくる図書館』(菅谷明子、岩波新書)
 『流言のメディア史』(佐藤卓己、岩波新書)
 『脳が壊れた』(鈴木大介、新潮新書)
 『アリストテレス入門』(山口義久、ちくま新書)
第2回の課題本は、第1回で「最も読みたくなった本」を獲得した、
 『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』

第3、4回のテーマは「労働」
第3回で発表された本は、
 『勤勉は美徳か?』(大内伸哉、光文社新書)
 『隠された奴隷制』(植村邦彦、集英社新書)
 『なぜ、残業はなくならないのか』(常見陽平、祥伝社新書)
 『空気の検閲 大日本帝国の表現規制』(辻田真佐憲、光文社新書)
 『新しい労働社会 雇用システムの再構築へ』(濱口桂一郎、岩波新書)
第4回目の課題本は、第3回で「最も読みたくなった本」を獲得した、
 『勤勉は美徳か? 幸福に働き、生きるヒント』

第5、6回のテーマは「医療」
 第6回の課題本は、『心病める人たち 開かれた精神医療へ』(石川信義、岩波新書)

第7、8回のテーマは「人文」
 第8回の課題本は、『グロテスクな教養』(高田里惠子、ちくま新書)

第9、10回のテーマは「進化」
 第10回の課題本は、『「退化」の進化学』(犬塚則久、ブルーバックス)

第11、12回のテーマは「米国_現代」
 第12回の課題本は、『ルポ 不法移民とトランプの闘い』(田原徳容、光文社新書)

第13、14回のテーマは「宇宙」
 第14回の課題本は、『宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅』(谷口義明、光文社新書)

第15、16回のテーマは「キリスト教」
 第16回の課題本は、『キリスト教は邪教です!』(ニーチェ、講談社+α新書)

【主催者】
私、連鎖堂です。よろしくお願いします。
普段は弁護士をしています。平日が殺伐としているので、週末の読書会は落ち着いたものにするよう努めてます。

【次回】
2021年8月9日(月祝) 午前10時30分から13時30分まで
次回は偶数回なので課題本型の読書会。課題本は、『キリスト教は邪教です!』(ニーチェ、講談社+α新書)です。

【詳細】
日程 原則毎月第4土曜日 午前10時から13時30分まで
場所 レンタルスペース・ソラニワビル
地下鉄中崎町駅から徒歩3分、阪急梅田駅から徒歩10分
参加費 会場費と昼食(軽食)費とで合計2000円

【参加方法】
tatsuya_wakitaアットyahoo.co.jp
まで、メールください。ぜひお気軽にどうぞ!