2020年10月29日木曜日

『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』(フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー)

#ハヤカワノンフィクション文庫


『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』(フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー)を読んだ。

 評論家や諜報員の予測が、猿のダーツ投げより的中しない。そんなんでいいのか。そこでガチンコ、予測トーナメント開催です。結果、ボランティア(年間3万円ギフト券)の一部「超予測者」は、高給取りのCIA情報分析官より予測力が高かったという…。超予測者の特徴は、思想信条に縛られないこと、運命論を信じないこと、数学と読書が好きなこと。

 予測力、実に高めたい。でも本当は、10年先の変化を見通すことは「絶対に」できない。予測力や知的柔軟性には価値がある。しかし人の予測には限界があるのです。

2020年10月26日月曜日

『クックズ・ツアー』(アンソニー・ボーデイン)

 

『クックズ・ツアー』(アンソニー・ボーデイン)

『クックズ・ツアー』(アンソニー・ボーデイン)を読んだ。

 野性的なのに洗練されてもいるトップシェフが、世界中で喰いまくる。ポルトガルで豚の丸焼き、東京で高級寿司、ベトナムでフォー(「適切に調理されたフォーほど旨いものがあるだろうか」)、バスクも旨そう。「じゅうじゅう音を立てているソテーしたキノコの真ん中に卵の黄身が乗せられ、じわっと形を崩しつつある」。

 旨い料理は単に味のいい物体ではなく、背景をもちます。「自分たちのコミュニティとそこの料理文化、そして料理人たちに強い共感を寄せている場所では、たいてい旨い料理が食べられるものだ」。

2020年10月22日木曜日

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)

『Q思考 シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ウォーレン・バーガー)を読んだ。

 答えよりも、問いのほうが重要です。例えばドラッカーは企業に助言するとき、何をすべきかの答えを示すのではなく、質問を投げかけ、どういう問いが重要かを明確にすることで実績をあげました。

 対して普通の専門家は、答えを与えるのが役割と思ってます。ちなみに私も思ってます。「どうしてあなたは自分が専門家より分かっていると思うのですか?」とか言い出しかねませんが、これへの返しは「確かに知っていることは少ない。だがその方がいいこともある」。専門家の答えだけでは新しい解決は生まれないのです。

2020年10月19日月曜日

『知性は死なない 平成の鬱をこえて』(與那覇潤)

『知性は死なない 平成の鬱をこえて』(與那覇潤)

 『知性は死なない 平成の鬱をこえて』(與那覇潤)を読んだ。

 著者の『中国化する日本』には感銘を受けましたが、著者はその後うつ病になっていたのでした。知的能力で生き、それを誇りとしてきた人が、その能力を失うとどうなるのか。知的能力とは何なのかを、深く考える本です。

 確かに個体ごとの能力差はある。しかし能力は、それが噛み合う環境(アフォーダンス)があって初めて働くもの。例えば医者は患者(や看護師や療養環境)があってはじめて成立する。汎用スキル、地頭などというのは事実を歪めている。能力は一人だけでは使えないもの、いわば共有財産なのです。

2020年10月14日水曜日

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン)

 

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン)

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン)を読んだ。

 私ここ数年、なぜか低温調理にハマってしまい、料理本を読むようになりました。本書曰く、料理できない、料理下手とかいうのは、そう思い込んでいるのが原因です。登場人物にも私にもうってつけの教えでした。料理は、基本を知って、あとはやればうまくなります。

 「残り物を最大限に利用する」スープがおいしそう。夏は冷たいスープ、冬は熱々のスープ。まず香りの出るものをソテーして、2時間煮込むだけ。残り物の骨と一緒に煮込むのがオススメ。そしていちばん大切なのは、煮込み時間です。ゆっくり煮込むこと。

2020年10月12日月曜日

『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)

『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)

 『社会心理学講義 〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(小坂井敏晶)を読んだ。

 超絶面白い。社会と個人とはどのような関係にあるか。問いが骨太すぎる。

 社会と個人が存在し、相互に影響する、では甘すぎます。例えば心理実験で我々は、強い被害を受けている人と弱い被害を受けている人を見ると、強い被害を受けた人を低く評価する傾向があります。これは単に無情だとか、認知バイアスだとかでは済まない。悪い人が悪い目に遭う、世界は概ね公正だ(公正世界仮説)、という心理がなければ、社会は成立しない。社会は個人から構成されますが、個人心理の底には社会があり、円環で一体なのです。

2020年10月9日金曜日

『ヒキコモリ漂流記』(山田ルイ53世)

 

『ヒキコモリ漂流記』(山田ルイ53世)

『ヒキコモリ漂流記』(山田ルイ53世)を読んだ。

 超面白い。笑える、泣ける、子育てと人生の参考になる。小学生のころ神童と言われた著者は、中高6年間を引きこもり。なんとか大検受けるもさらにダメ生活の後、一発屋芸人。経過ぜんぶ面白い。

 著者が引きこもりのインタビューを受けたとき、「あの6年は完全に無駄だった」と答えたら、嫌な顔をされました。「あの6年があったからこそ、今があります」が期待されているのです。しかし、それは違う。「何の取り柄もない人間が、ただ生きていても、責められることがない社会…それこそが正常だと僕は思うのだ」。

2020年10月7日水曜日

『流線形の考古学 速度・身体・会社・国家』(原克)

『流線形の考古学 速度・身体・会社・国家』(原克)


『流線形の考古学 速度・身体・会社・国家』(原克)を読んだ。

 流線形。かっこいい。そして未来的。流線形の列車がグッと来ます。しかし実は流線形には、ダークな面があったのです。

 ①流線形は、科学的に正しい。②流線形は、無駄がない。③流線形は表面的な飾りではなく、有機的一体でなければならない。どうですか、ちょっとキナ臭くなってきませんか。最も有名な流線形デザイナー、レイモンド・ローウィー曰く、「優生学的淘汰が進めば、かならずや美学的に正確な世代が誕生し、こうした〔流線形の〕衣裳もぴったりハマるようになるだろう」。ガチで優生学じゃないですか。

2020年10月6日火曜日

『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む 4万5千キロを競ったふたりの女性記者』(マシュー・グッドマン)

『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む 4万5千キロを競ったふたりの女性記者』(マシュー・グッドマン)

『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む 4万5千キロを競ったふたりの女性記者』(マシュー・グッドマン)を読んだ。

 超面白い。『八十日間世界一周』より速く、現実世界で世界一周することができるのか。これに挑んだ二人の女性記者は対極的でした。ネリー・ブライは野心的な行動派で、得意は潜入取材と暴露記事。かたやエリザベス・ビズランドは育ちが良く(ただし少女の頃に没落)、文学を愛し、得意は文芸コラムでした。

 19世紀末の世界各地で何が待ちうけるのか。嵐や大雪のなか80日に間に合うのか。いったい二人のどちらが勝つのか。そして、きつい男性社会の新聞業界で女性が活躍するとどうなるのか。うーん実に面白い。

2020年10月3日土曜日

『腕一本・巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選』(藤田嗣治)

『腕一本・巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選』(藤田嗣治)

『腕一本・巴里の横顔 藤田嗣治エッセイ選』(藤田嗣治)を読んだ。

 藤田が自らあかす絵の奥義は、「膚」と「黒」。パリで貧窮画家生活をしながら自分なりの絵を求めて苦闘し、辿りついた境地です。

 「膚」について、日本には西洋のような裸体画は存在しないものの、春信や歌麿が「僅かな脚部の一部とか膝の辺りの小部分をのぞかせて、飽までも膚の実感を描いているのだという点に思い当り、始めて肌というもっとも美しきマチエールを表現してみんと決意」したといいます(マチエールとは質感、材質的効果)。「黒」も、東洋人こそがその美しさと味わいを熟知しているというのです。