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2026年4月5日日曜日

第48回読書会 『アイロニーはなぜ伝わるのか』&『Dr.STONE reboot百夜』


読書会「新書でマンガを読む」を開催しました! 課題本は2冊、新書『アイロニーはなぜ伝わるのか』と、マンガ『Dr.STONE reboot:百夜』です。

 目論見としては、『アイロニーはなぜ伝わるのか』で得たアイロニーの知識をもって、『Dr.STONE reboot:百夜』を読み解こうというもの。はたして目論見どおりにいくのでしょうか?

 (以下、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』を「新書」と、『Dr.STONE reboot:百夜』を「Dr.STONE」と表記します。)

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【Aさん】

 アイロニーは、標準語や、私の母語の京都弁だと、非難が強くなりすぎてしまう。隣家が晩に騒がしかった次の日に、「昨日の晩も、えろう頑張らはって」とか。
 これが大阪弁だと、「昨日の晩もえらい頑張ってはりましたな~」で、もうちょっと許される感が出るような。
 で、アイロニーには、大阪弁ならノリツッコミで返せるんですよ。「そうそう昨日はちょっと頑張りすぎてしもて」みたいな。ノリツッコミってすごい発明ですよね。

 それでいうと、Dr.STONEは壮大なノリツッコミでは? 必ず帰ってくるという白夜のアイロニーへの、レイのノリツッコミとして読めると思うんです。

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【Bさん】

 アイロニーが苦手というか、額面通りに受け取ってしまうんです。出かけた後に大雨になって、「お出かけ日和だよね」と言われたら、「ああ、この人は、雨が好きなんだな」と思う。私も、陽がさんさんと照っているより、雨のほうが好きなんで。いや、これはアイロニーじゃなくて、本当にそうなんです。

 だからというのでもないですが、私はDr.STONEにはアイロニーはないと思いました。新書によればアイロニーとは期待と現実のギャップだということですが、Dr.STONEは、期待が現実化していく過程こそが面白いと思うので。

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【Cさん】

 新書は、アイロニーが伝わる理由の分析がメインですが、アイロニーの効果についても書かれていて、私はそこが面白いと思いました。アイロニーは、「期待」に言及することで、それと対になる「現実」とのギャップを浮き彫りにすることより、そんな期待が存在してたんだな、というインパクトを与える効果があります。

 その視点で読むと、Dr.STONEの、次の6点がアイロニーとして読めると思います。

【1】
「まあ、特に役には立たないオモチャだが… まぁ… ないよりは…?」「評価ありがとうございます」「褒められてねーよ!」
期待:評価するなら褒めるだろう あるいは、面と向かって低評価してはならない
現実:褒めていない あるいは、ロボットは面と向かって低評価されても気にしない

【2】
「レイ! 計算 超がんばってくれ お前ならやれる!!」
「これ以上無理です わたしは機械ですから がんばるとかそういった精神論は…」
期待:がんばればできる
現実:できない あるいは、ロボットにはがんばるという概念はない

【3】
「白夜様 戻ってきてくれますか?」
「…ああ 戻ってくる だから気楽に待ってな レイ」
期待:戻ってくる
現実:戻ってこられない(レイは戻ってこられないことを知らない。片面的劇的アイロニー)

【4】
「人間たちが全ての燃料を使い切っちゃいました!!」
期待:残されるものに対して少しは配慮するだろう
現実:人間はロボットの安全を気にしない

【5】
「こんなに近くに こんなに水が満ちてるのに 重力の向こうの300㎞はあまりにも遠すぎます」
期待:近くにあるのなら手に入るだろう
現実:重力のため、300㎞先の地球からではなく、2億5千万㎞離れた彗星からのほうが、水を入手しやすい

【6】
「白夜は この光を見たでしょうか? 君が見えると思ってくれたでしょうか? わかりません でも いつか見つけてくれるでしょう そして記憶してくれるでしょう このわたしレイとISSと宇宙を」
期待:白夜が信号としての光を見て、記憶してくれる
現実:白夜はいまわの際、または死んでいる(劇的アイロニー)

 以上6点ですが、私は、【5】のアイロニーのオリジナリティーが高いと思いました。

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【Dさん】

 新書31頁に、「アイロニー標識」、例えば「…(笑)」や、「……」などが、アイロニーの合図として使われると書かれています。
 新書は文章表現だけに絞って分析されてますが、マンガでアイロニーを考えると、アイロニーは映像表現のほうが伝わりやすいんじゃないかと思いました。例えばアイロニーを告げるときの表情などで、アイロニーをうまく伝えることができると思います。

 Dr.STONEのZ=1冒頭、美少女型ロボットは実はただの模型で、作成途中の自作PCみたいなほうが本物のロボット、というのも、映像表現をうまく使ったアイロニーと思います。

 □

【Eさん】

 Dr.STONEのレイが、人と最も異なるのは、アイデンティティの問題がないところだと思います。レイと、Z=9で150年後に3Dプリンタで「復活」する新バージョンのレイとは、当然のように同じものとされています。これに対して、人は新バージョンとアイデンティティが連続することはありません。
 このギャップによって、人間のアイデンティティの一回性、唯一性が表現できるのかと。

 Hさん AIから人間を逆照射するというのは、表現として使えそうですね。

 Eさん そうですね。もう一つ、Z=8で、彗星にドラゴンのような地球外生命体が凍って閉じ込められているのですが、レイの把握では「有機物資源」です。これも、地球外生命体を発見したときに期待される振る舞いと、資源を確保しようというAI的・目的的な振る舞いのギャップを示したアイロニーだと思います。

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【Fさん】

 私の好きな映画に、「さよなら子供たち」があります。ナチス占領時代のフランスで、ユダヤ人であることを理由に寄宿学校の先生が連行されてゆくとき、「さよなら子供たち、また会おう」と言うのですが、もう帰って来られないことはわかっているんです。レイの「帰ってきてくれますか」にも似た、劇的アイロニーだと思います。

 新書のほうでは、私の父から聞いた、海外での実体験を思い出しました。父は、後ろから女性がついて来ているときに、ドアを、日本でするようにそのまま通った(ドアを押さえなかった)ところ、後ろから大声で、「Thank you so much!」と叫ばれたとか。これは新書に出てくるアイロニーの例、そのままですよね。父のは実体験ですが。すごく印象に残ったみたいで、この話はしばしば言ってました。

 人は伝えたい、という思いが根底にあり、アイロニーはそれを強く表現したいツールな気がします。

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【Gさん】

 アイロニーには、受け取る側の問題があると思う。

 受け取る側が深読みしすぎると、なんでもアイロニーに聞こえてしまって、表現をそのまま素直に了解することができなくなってしまう。なんなら『アイロニーはなぜ伝わるのか?』を、アイロニーであると読んで、実はアイロニーは伝わらないものだということを表現したかった、とか読んでみたりして。
 だから、受け取る側がどこまでやるかという問題は重要だと思います。

 アイロニーというものが受け手の解釈によって完成するという例として、Dr.STONEの廃棄されたロボットが地球を救うという展開そのものを「アイロニカル」と評する、というのを上げます。

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【Hさん】

 私は劇の脚本を書いてますが、直接的に表現するのは、怖いことですね。例えば好きだということを告げるのに、「好きだ」というセリフは、書けないですよ。

 私は、直接的な表現によらずに伝えることを、自分ではずっと「うらはら」と呼んでいました。役者さんに、「ここは、セリフはこうだけど、うらはらの表現で」といったような。新書を読むと、アイロニーと捉えることもできるなと思います。

 あと新書で印象に残ったのは、「運命のアイロニー」の一例として出ている(149頁)、シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』の登場人物の、「この壮烈な場面は繰り返し演じられるだろう」ですね。劇と現実とが交じるのが、感銘を受けました。

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【Iさん】

 新書では、反・民主主義者ジェイソン・ブレナン『反・民主主義』(150頁)や、プラトン『法律』(158頁)の、アイロニーの分析が印象に残りました。プラトンの話から続く、「樹木の当事者適格」、自然物に法的権利を付与するというのが、アイロニーなのかアイロニーを超えるのか(160-161頁)といったところも。

 Dr.STONEで印象に残ってるのは、Z=3の無重力での踊りの場面で、急にエロくなる! ところ。これはSFが続いたので読者サービスという、ある意味アイロニー、ですかね?

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 Dr.STONEは少年マンガですから、アイロニーが多いタイプでもないと思うのですが、それでもやはり、アイロニーが効果的に使われています。
 アイロニーは、(不合理な?)期待を炙り出す、実に面白い概念でした。

 あと『アイロニーはなぜ伝わるのか』で読書会をすると、「それはアイロニーかい?」という冗談が飛び出しがち。

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 今回の料理は豚バラ肉の塩トマトソース。福田和也の追悼(参加者に告げるのを忘れてましたが)のために、塩を強く利かせてみたんですが、ちょっとやりすぎたか。

 しかし、新書でマンガを読む、そんなことやってる読書会、他にないんじゃないですかね?(自読書会自賛) とても面白かったです。ではまた。


 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)

2026年2月11日水曜日

第47回読書会 ビブリオバトル・テーマ「マンガを深く読むための新書」


読書会、「マンガを深く読むための新書」を開催しました! 今回はサマー・スペシャル、ビブリオバトルが2回です。まずマンガのビブリオバトルをして、次に「マンガを深く読むための新書」のビブリオバトルをする。


 目論見としては、チャンプ本となったマンガを、チャンプ本となった新書の知見で読み解くと、より深く読める、読めるぞ! みたいなものを期待しているのですが、はたしてこの目論見、というか皮算用のようなものどおりに、行くのかどうか! ドキドキです!(私が)

 まずはマンガのビブリオバトルです。

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【Aさん】

『隊長と私』(クリハラ タカシ)

 すごい不思議な世界で、夢のようなというか、読んでいると癒されるというか。いや違うな、言葉にしにくいんですけど、心の中で何かが解消指していくような…。というかこうやって説明するのももどかしいんで、読んでみてください! 私はこの本を手に取ったが最後、いつも終わりまで読み返してしまうんです。

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【Bさん】

『Dr.STONE reboot:百夜』(原作:稲垣理一郎、マンガ:Boichi)

 けなげなロボットって、いいですよね。すごく。わたしはここにいます。戻ってきてくれますか、みたいな。わたしはまもなく機能停止します、みたいな。もう泣きポイントがいっぱいです。

 物語世界も素晴らしい。大気圏突入してしまわないための燃料の獲得方法など、物理学的な緻密さも、読みどころです。

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【Cさん】

『大奥』(よしなが ふみ)

 江戸時代のパラレルワールドで、男女が逆転した世界の物語です。逆転なので、男性が大奥にいます。この設定を聞いただけだと、逆ハーレムが描きたかったのかと思うかもしれませんが、全く違います。社会的なリアリティがすごいんです。逆転したので女性が幸せだという単純なことでもなくて。人物の造形も、驚くほど秀逸です。これはぜひ、皆さんに読んでもらいたいです。

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【Dさん】

『これ描いて死ね』(とよ田みのる)

 「マンガ家マンガにハズレなし」という格言があるんですが、まさにそれ。東京都の島しょ・伊豆王島に住む、マンガを描き始める女子高生の話です。

 仲間を増やしていくという王道の展開ですが、マンガ部の面々のキャラクターがすごく良くできてまして、風呂敷というか世界観を拡げていくタイプの主人公と、絵が上手くて物語をきっちりまとめようとする友人、また、マンガを読むばっかりの友人とか。実にいいマンガです。

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【Eさん】

『絶対安全剃刀 高野文子作品集』(高野文子)

 高野文子さんって、今は、独特の落ち着いた画風が確立されて、高い評価も確立されているように思いますが、本書は初期の短編集で、一作一作画風が違いますし、かなり実験的な作品もあります。葬儀の場面を、定型的なコマ割りを連続させて描くとか。

 私が最も好きな作品は、「田辺のつる」。子どもとして描かれてるのが、実は高齢の認知症のおばあさんという。主人公としてのリアリティと、他の多くの人たちから見た状況とのズレを描くというのが、高野文子さんの面白さではないかなと思います。

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【Fさん】

『銃夢』(木城ゆきと)

 やっぱり、マンガって世界観というか、空気感ですよね。私の子どもの頃の現実で初めて経験した異世界、競輪場から受けた印象が、『銃夢』の「モーターボール」に似てるんです。その場末感と、サーキット特有のオイルの匂いまでしてくるような、リアリティが。いつまでもその世界に浸っていたい。

 ただこのマンガがすごいのは、世界観に淫するようなのではなくて、そこを超えようという意思が感じられるところなんです。

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【Gさん】

『暗殺教室』(松井優征)

 素晴らしくよくできてるんです。松井優征さんって、計算しきって描いてるんです。連載を始めた時点で既に、最後までの構成を作っていた。しかも、人気が出なくて早めに終わってしまうことに備えたパターンまで考えていたという。でも、元々『ボボボーボ・ボーボボ』(少年ジャンプ伝説のギャグマンガ)のアシスタントもやっておられて、ハジケるところでハジケることもできる。この人気の秘密、つまりマンガづくりの理論を、皆で味わってみたいです。

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 ではマンガのチャンプ本投票です。めっちゃ迷う。そして、『Dr.STONE reboot:百夜』と『これ描いて死ね』との決選投票となり…、チャンプ本は『Dr.STONE reboot:百夜』となりました! ワーワー!

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 続きましてさっそく、「マンガを深く読むための新書」ビブリオバトルです!

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【Aさん】

『老いと創造 朦朧人生相談』(横尾忠則、講談社現代新書)

 本書は、人生相談に横尾さんが答えたもので、全ての相談に、最後には「好きなようにしてください」と返すその言葉も面白いですが、それぞれの答えに、横尾忠則現代美術館のキュレーターが、絵をつけているのがいいんです。
 本は言葉だけですが、マンガはビジュアルと言葉ですよね。言葉で伝わらないものとあると思うんです。ビジュアルで、何かの答えを感じてもらうようなことが、あると思う。それを本書で感じました。

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【Bさん】

『宇宙はどこまで行けるか ロケットエンジンの実力と未来』(小泉宏之、中公新書)

 『Dr.STONE reboot:百夜』をチャンプ本に選んでいただきましたので、このマンガをより深く読むために、この新書を。最新の宇宙論が分かれば、『白夜』をより深く読めます! マンガでレイが燃料を獲得するために、なぜすぐ近くの地表(地球)に降りずに、わざわざ彗星まで行くのか。ロケット方程式が分かれば、そりゃそうだよなと、分かるんです。

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【Cさん】

『性差(ジェンダー)の日本史』(「性差の日本史」展示プロジェクト、インターナショナル新書)

 国立歴史民俗博物館が監修した、「性差(ジェンダー)の日本史」展の見所を解説した新書です。史料から語るものです。
 これを読むと、明治以前のほうが、男女の区分けは少なかったのではと思いますね。例えば采女(うねめ。天皇や皇后に近侍した女官)は、今でいうバリキャリで、能力で選ばれていました。その他、古代では女性も自分の財産を所有していた等々です。

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【Gさん】

『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』(松井優征、佐藤オオキ、集英社新書)

 「弱者」ってありますが、松井優征さんって、たとえばめちゃくちゃ絵が上手いとか、ワンピースみたいな勢いと壮大さが描けるとか、そういった天才ではないと思うんです。自分でそう言っていて、だから「どう見せるか」に全振りしていると。
 だからこそ、どう創りあげるかというのが、とても説得的なんですね。実際にありうるリアリティと、マンガ的盛り上げを、いかに両立させるかとか。マンガを知るにはすごくいい新書だと思います。

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【Dさん】

『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)

 マンガでの構図の重要性って、言うまでもないくらいですよね。マンガを読み込むときに、構図の面から読んでみると、また新しい発見があると思うんです。
 例えば、私が発表した『これ描いて死ね』のこのシーンでは、立った登場人物と座った登場人物を描いて、構図は底辺が広い三角形で、印象的なセリフがバーンと上に掲げられている。やっぱり印象的ですよね。

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【Fさん】

『荒木飛呂彦の漫画術』(荒木飛呂彦、集英社新書)

 荒木飛呂彦曰く、「主人公は常にプラス」。主人公を常にプラスにするのはけっこう辛い作業のようで、いったんは主人公を挫折させようかという「誘惑」に駆られることもあるらしいんですが、それはダメだと。マンガは辛いこともある人生を表現するものではない。常にプラスの気持ちを与えるものなんだという、強い倫理感のようなものが印象的です。
 『岸辺露伴は動かない』の「富豪村」をどのように描いたかの解説も面白いですし、マンガを知るのにいい新書です。

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【Eさん】

『アイロニーはなぜ伝わるのか?』(木原善彦、光文社新書)

 先ほどのチャンプ本『Dr.STONE reboot:百夜』のレイの、「戻ってきてくれますか」をけなげに感じるのは、戻って来れないからですよね。これは本書で言う「劇的アイロニー」なのかもしれない。
 アイロニーっていうのは様々で、単に逆のことを示すだけではありません。ただそうなると、より一層、なぜ伝わるのか不思議ですよね。
 本書では「メンタル・スペース構造」などの理論で、アイロニーの伝わり方を解明しようとするものです。後半は古典作品などを題材とした実践解説です。マンガは例になっていませんが、マンガを対象にやってみるのも面白いはずです。

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 では新書のほうの投票です。こちらは『宇宙はどこまで行けるか』と『アイロニーはなぜ伝わるのか?』の決選投票となり…、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』がチャンプ本に選ばれました!

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 ですので次回は、『アイロニーはなぜ伝わるのか?』の知見をもって、『Dr.STONE reboot:百夜』を読み解こうではないかと!

 現在明らかになっているだけでも、『Dr.STONE reboot:百夜』ではアイロニーが使われているようなので。楽しみです!


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2026年1月19日月曜日

第46回読書会 『土葬の村』

『土葬の村』

『土葬の村』読書会を開催しました。本も面白かったですが、葬儀のような、人によって実は大きな違いがある経験を話し合うというのも、実にいいですね。これも読書会の醍醐味だと思います。

 出た意見は次のとおりです。

【Aさん】

 30年くらい前、奈良県での親族の葬儀は、土葬でした。この本に書いてあるとおり(25ページ)、埋め墓と参り墓の両方がありました。

 埋め墓では、一家で使えるスペースは限られているので、掘っていると普通に骨が出てくるんです。それでみんなが「あれは○○さんの骨やろか?」「いや、もっと古いから○○さんちゃうか?」って話すんですよ。中学生だったので、他に葬儀の経験がそんなになかったこともあり、骨が出てきてもそんなものかと思っていました。

 家系に長寿の人が多かったので、文化というか何かしらが受け継がれてきたというのもあるかもしれません。

 66ページ「この時期〔新型コロナ〕だから自粛で人を呼べないということもありますが、そうでなくても縁故関係が疎遠になってきている。それが土葬が減った理由です」の部分。人が亡くなるにあたってそれに纏わることは人間にとって大事なことだと思うので、その大事なものがコロナ禍で失われたのだと思うとショックでした。

○ 理想の弔われ方は、できたら陽の光や風を感じるようなところに埋められたいかな。

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【Bさん】

 170ページ、「お骨上げのときまだ温かい骨を手につかみ、火葬役の働く姿を遺骨とともに子どもに見せることがある。顔をしかめる大人もいたが、なんの衒いもなく子どもに見せることが、とりもなおさず人が死ぬことの意味をまっすぐ伝えることだ」

 これを読んで、30年以上前に祖父がなくなったとき、叔父が子供たちに祖父のほっぺたを触らせて、硬くなっていることや、冷たくなっていることを教えていたのを、まざまざと思い出しました。

○ 理想の弔われ方は、献体。私は献血が趣味っていうくらいで、最期も社会に貢献しようと思って。ちなみに、献体も、最後は火葬なんですよね。

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【Cさん】

 民俗が印象的。例えば285ページ、「モノオイ」のかけ声、「アネアネ!」「クネクネ!」「タマタマ!」「ワー!」とか。

 39ページの「巫女聞き」も。「ああぼちぼち乗り移ってきたわ」とか言う。あと、巫女聞きから帰ってきたときの定型どおりの答えが、「あほらし、こんなこと二度とせんわ」というのもなんか笑える。

○ 理想の弔われ方は、子どものころに遊んでいた雑木林に、そのまま埋められるというのがいい。この本みたいなコミュニティの中での土葬っていうより、元素から自然に還りたいみたいな。

 Gさん 散骨とはちょっと違うか。樹木葬に近いような。

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【Dさん】

 「ムダをすることが供養になる」(82ページ)というのがなるほどと思った。

 親しい人に前触れなく失踪されたりすると、のこされた人は、気持ちを処理できない。弔うということは、なにかムダなことでもして、世界をその人がいない世界に再調律するものなんじゃないかと思いました。

 さっきCさんが言っていた、巫女聞きの「あほらし、こんなこと二度とせんわ」という定型の答えは、死者の声が聞けるという非日常の世界に執着してしまわないための一種の分離儀礼なのでは。

○ 理想の弔われ方は、現実にはあまりこだわらないんですが、妄想としては、完全消滅したい。Cさんみたいな元素がめぐるっていうのじゃなくて、元素レベルまで完全消滅したいんですよね。反物質で対消滅させれば可能かも。

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【Eさん】

 21ページ、「おそらく私が南山城村の土葬の最後の導師なのでしょう」というのが印象的でした。もう送るコミュニティがなくなっているんだろうなと。

 知人が亡くなったとき、葬儀社やお坊さんには全く頼まずに、仲間でバンドを入れて弔ったことがあった。祭壇も自分で作って。これはとても印象に残ってますね。皆で送るという感じになるし。

 Gさん お坊さんにも色々いて、明らかにエンターテイメントにふってるお坊さんもいるよね。

 Bさん 母の葬儀は神式で、笙の演奏がついて、ある意味バンド入りだった。

 Eさん 確かに、読経の声のうねりにも、芸を感じたことがある。

○ 理想の弔われ方は、あまりこだわらないというか、合理的なのがいい。私は、作品が残るというか、データとして残ればいいと思っているので。

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【Fさん】

 もう50年くらい前、子どものころに体験した土葬は、この本の一章と、同じ部分が多かった。白装束に三角巾、野辺送り、75ページ写真と似た手押し霊柩車もありました。北関東ですが、昔は全国で土葬に共通点があったんだなと。

 50年前の土葬で印象的だったのは、「六尺(ろくしゃく)」と呼ばれる、町内会の係。墓地に行き穴を掘り、埋葬を担当する係です。
 町内会長が葬儀委員長みたいな役目をして、六尺や、帳場(香典の受付)、調理などの葬儀の係を決めて運営します。おそらく、死の穢れを町内できちんと処理しなければ、という意識が強かったんじゃないかな。
 本書にもあるとおり親族はあまり遺体とは関わらなくて、六尺など町内の係の人々にお礼をするんです。

○ 理想の弔われ方は、私も元素レベルで自然に還るという形。散骨のようなのが理想かな。

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【Gさん】

 83ページ、「90歳で亡くなったおばあさんは、例えば20歳で嫁入りしてきて、70年間田んぼや畑を耕し村のつきあいをしてしたんです。葬儀会館のお葬式は、それをある日、一瞬で送るわけです。私はそれにどうしてもなじめません。みんなで“ムダ”をいっぱいして故人を送ることが供養になるのです」というのが染みた。

 私の経験でも、葬儀っていうのは、周りの納得の問題なんだよ。

○ 理想の弔われ方はない! だってどうせ私が死んだら世界は終わるのだからさ...。

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 いやー、面白かった。土葬を直接経験したのが7人中2人というのは驚き!

 今回の料理は、豚バラ肉グリルにフライドオニオンのバーベキューソース、海老とオリーブの冷たいマリネなどなど。

 ではまた来月!

豚バラ肉グリルにフライドオニオンのバーベキューソース

 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)

2026年1月18日日曜日

第45回読書会 ビブリオバトル・テーマ「少数派」

ビブリオバトル・テーマ「少数派」

ビブリオバトルを開催しました。テーマは「少数派」。

以下の8冊が紹介されました。様々な少数派の本をどうぞ!

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【1冊目 Aさん】

『土葬の村』(講談社現代新書、高橋繁行)

 日本は火葬大国。しかしほんの数十年前まで、土葬も普通に行われていました。しかも日本の火葬はお骨を墓の下に納めるもので、土葬の名残がある。全てを灰にしてしまう徹底的な火葬とは違います。土葬は別世界のものではないんです。

 土葬に手間がかかるのが印象的でした。死後硬直よりも前に埋められる体勢にしなければならないとか、あとやっぱり場所の問題とか。

 その他、日本にもあった風葬や鳥葬、沖縄の土葬など、様々な弔いが心にのこります。

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【2冊目 Bさん】

『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書、望月優大)

 移民についての議論は色々ありますが、まずそもそも、移民は既にいる(人口の2%強)、というのが出発点であるはずです。しかし、日本は単純労働の移民を受け入れない、という建前があるため、既にいる移民が議論されず、不可視となっています。

 入局管理局に与えられている裁量の大きさに驚きます。そこには議論がなく、それ以前に、議論の材料となるべき実態が知られていません。それを知るためには、堅いテーマですがリーダブルな本書、お勧めです。

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【3冊目 Cさん】

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書、伊藤亜紗)

 目の見えない人の世界は、目が見える人が目をつぶった世界とは、ぜんぜん違います。

 目の見える人は、世界を2D的に把握しています。対して、目の見えない人は、模型などで世界を学ぶこともあって、世界を3Dで把握しています。「視覚がないから死角がない」というのが面白い。例えば皆さん、万博公園の「太陽の塔」には顔がいくつあると思いますか? 2つ? 違います。「背面」にも1つ顔があるので、3つです。目の見えない人はこれを間違いにくい。目の見える人は、「前面」からのビジュアルを思い出すのですが、目の見えない人は「背面」もちゃんと把握しているのです。

 Fさん
 サッカーの名手は自分や状況を鳥瞰できると聞いたことがありますが、それは目の見えない人の世界と関係がありますか?

 Cさん
 いやおっしゃるとおりで、メッシの状況把握は、ブラインドサッカーでの把握と似ていると書いてありました。

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【4冊目 Dさん】

『女装と日本人』(講談社新書、三橋順子)

 歴史が面白いんですが、社会学的な分析も鋭いです。例えば、「パス絶対主義」について。女装者における、男性だとバレないことに強い価値をおく意見です。

 しかし著者によれば、女装だとバレていても、女の格好をして女として振る舞っていれば(doing female gender)、相手も「女扱い」してくるというのです。「日本社会では、バレたからといって相手の態度が百八十度変わるというものではないのです(稀にそういう人もいますが)」
 そういう女扱いについて、「『それは配慮パスだから、ほんとうのパスではない。意味がない』と否定するパス至上主義の性同一性障害者は、あまりにも現実の社会を知らなさ過ぎます。世の中というものは、相互の配慮で成り立っているのですから」。うーん、なるほど。

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【5冊目 Fさん】

『日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る』(ブルーバックス、播田安弘)

 ブルーバックスを持ってきましたが、ブルーバックスなのに、日本史ですよ。本書のような日本史の理系的把握、とても面白いです。

 例えば秀吉の中国大返し。素早い決断だというような話で済ませずに、実際、どんな困難が生じるのか、分析してみるのが本書です。秀吉の軍は、30㎏の荷物を担いで1日あたり30㎞の道のりを8日間続けて踏破し、その後に戦ったというのですから、すごいのは決断力だけではないことが実感としてわかります。

 その他にも、元寇の神風、日本海海戦の敵前大回頭などが分析的に検討され、興味津々です。

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【6冊目 Gさん】

『白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」』(中公新書、渡辺靖)

 白人はこの先、少数派に転落することが人口統計から明らかです。

 自分は差別主義者ではないという白人ナショナリスト曰く、少数派に転落することの恐怖や、移民を制限するべきだという考えを口にすると、差別主義者と呼ばれる。「日本に毎年、数百万人の移民が来て、それに反対すれば差別主義者と言われたら、どう思いますか?」

 白人ナショナリズム、思ったよりずっと複雑で、重い問いだと思いました。

 Dさん
 アメリカはそもそも、移民の国では?

 Gさん
 先に来たほうが偉いということになっているようです。

 Dさん
 えええ。うーん。

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【7冊目 Hさん】

『知の仕事術』(インターナショナル新書、池澤夏樹)

 インターナショナル新書の001番、個人編集で世界文学全集と日本文学全集を出すという偉業をはたした池澤夏樹さんが、初めてその読書術などを公開したもの。おすすめです。

 さて本日のテーマは「少数派」ですが、本書の「はじめに」を読んでみましょう。

 「ものを知っている人間が、ものを知っているというだけでバカにされる。ある件について過去の事例を引き、思想的背景を述べ、論理的な判断の材料を人々に提供しようとすると〔…〕、それに対して「偉そうな顔しやがって」という感情的な反発が返ってくる。」

 どうですか皆さん、お互いに新書を紹介しあって遊ぶなんて、たいがい少数派を自覚しないといかんですよ!

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【8冊目 Iさん】

『カーストとは何か インド「不可触民」の実像』(中公新書、鈴木真弥)

 カーストの根本は職業固定のようで、その意味では世界のどこにでもあるものと思います。

 しかし、インドのカーストは根強い。インド政府はカーストを崩そうとしていますし、カーストと関係のない宗教も沢山ありますし、カーストと関係がなかった分野(ITなど)のほうが参入規制がなくて発展したという経済的現実もあるのに、複雑に絡まり合って、難しい。
 例えば、被差別カースト出身者に大学入学の優先枠を与えると、合格発表でカーストが明らかになって、逆に固定化してしまうのはないかとか。というか、そもそも全ての合格発表にカーストが書かれる、というのには驚きました。やはりカーストの国ですね。

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 さて、どの本が読みたくなったか投票しますと…、僅差の中、『土葬』『女装』『日本史サイエンス』の決選投票となり…、さらに僅差で『土葬の村』がチャンプ本に選ばれました! ワーワー!

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 今回の料理は、低温調理豚バラのバルサミコソース・湯むきしたプチトマトのマリネ・牡蠣のリゾット・エビとズッキーニのソテー。料理は私一人で作ってますので、改めて写真で見ると、これを25分くらい?(もちろん読書会前の下準備は別)でサーブできるようになったのは、手際がよくなったもんだ、と思ったことでした。この後、クリームチーズとあんずジャムのカナッペと、フレンチトーストもサーブしてます。

 では次回は、『土葬の村』でお会いしましょう! 

低温調理豚バラのバルサミコソース・湯むきしたプチトマトのマリネ・牡蠣のリゾット・エビとズッキーニのソテー

 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)

2026年1月17日土曜日

特別回第4回 「文学フリマ京都で買った本」

文学フリマ京都で買った本

人生で初めて、文学フリマなるものに行ってみました!

 自分で作った本を売る人々が、かなり広い体育館サイズを埋めるくらい集まって、すごく独特の雰囲気です。個々のブースは小さい(椅子二つ分)んですが、約700ブースもあって、通路の両側に果てなく並んで、そして、分け入っても分け入っても知らない本。新鮮でした。本屋では、もうそういうことはないので。

 最近は初めての経験というのが減っているので、楽しい!

 慣れないうちはぜんぜん買えなかったのですが、一冊買うと興奮してきて、結局5冊買ってしまいました。すっきり。
 あと、見本誌コーナーに最後になって気づいたのですが、このコーナーも選びやすくていいですね。

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 午後からは、参加者7名で、特殊ビブリオバトル「文学フリマ京都で買った本」を行いました。文学フリマで買った本をいきなり読んで集まり、互いに紹介し合うという遊びです。

 以下、参加者による本の紹介です。

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【Aさん】

 文学フリマは初めてです。こんな機会がなかったら自分では一生たぶん行かなかったので、今日はよかったです。全てのブースをなめました。でもやっぱりちょっと立ち読みはしにくいかな。

 買った本のなかでイチ押しは、『自由律俳句集 寿司はSF』(浅井五月)

 表紙から良い感じなので、手に取りました。

 例えば、

 駅弁太陽ますの寿司あなたに会いにサンダーバード

とか。あのサーモンピンクのます寿司と、あまずっぱい感じの旅の期待感が合わさって、いいと思いません?

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【Bさん】

 SF大会は行ったことありますが、文学フリマは初めて。けっこう買っちゃいました。特に小説家になろう短編集3冊を買いましたが、考えると、ネットで無料で読める。でも買った。

 買った本のなかでイチ押しは、『これより先には入れません』(谷川俊太郎、木下龍也)

 例えば、

 大金持ちの伯母に自家用UFOを誕生日にプレゼントされた
 宇宙に興味のない妻はそれをメルカリに出した以下次号

とか。これ、誰の作だと思います?

 正解は谷川俊太郎さん。90歳を過ぎても、この詩が作れるのはすごいなと。詩人と歌人の交換「対詩」になっていて、面白いです。

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【Cさん】

 文学フリマはコロナ前に行ったことがあります。昔よりもたぶん3倍くらいブースが増えたように思いました。

 買った本のなかでイチ押しは、『かわいいを創造する! 人とぬいぐるみの共同プロジェクト WE ARE KAWAII ともるんといっしょ』(星野 灯×秘密結社らびっといあー)

 かわいいです。ひたすらかわいいです。最初から最後までかわいいです。人生で初めて秘密結社に出会いました。謎のかわいいぬいぐるみは、じつはネコ(のぬいぐるみ)をかぶっています。その謎ぬいぐるみが書いた(という)詩も載ってます。かわいいですね。

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【Dさん】

 文学フリマは初めてですが、ビール醸造ものと、翻訳ものを狙ってみました。

 買った本のなかでイチ押しは、『JORGE LUIS BORGES BORGES ON MYSTERY』(エディション・プヒプヒ)
 ホルヘ・ルイス・ボルヘスの、推理小説に関する文章をまとめたものです。

 ボルヘス曰く、推理小説が、「疑いながら読む」という読者を初めて作ったと。とても面白い指摘です。

 それはいいんですが、推理小説の歴史を振り返りつつ、『モルグ街の殺人』のネタバレから初めて、次々にネタバレします。
 ボルヘス曰く、推理小説は滅びつつある、なぜなら全てのプロットが書かれてしまうから、というのですが、それはボルヘスが全てネタバレするからでは。

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【Eさん】

 文学フリマは初めて。作り手の人とちょっと会話できたりして、やっぱりいいですね。

 買った本のなかでイチ押しは、『都市空間における管路の形態』(屋良信幸)

 都市の路地裏やビルの裏側に走る、ガス管・水道管・排気ダクトの、美しさ! 「魅力的なのは3つのガスメーターが、リズミカルに並ぶ姿。それは、3人組アイドルユニット」。こいつは何を言ってるんだ、とお思いか? しかし、見れば本当に分かります。

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【Fさん】

 文学フリマはずっと行ってます。

 買った本のなかでイチ押しは、『CRAZY GAL ORCHESTRA MAGAZINE vol.1』(CRAZY GAL ORCHESTRA)

 みなさんご存じですか? 日本で演奏されるオーケストラの曲のうち、女性作曲家による曲はなんと0.52%だけ。200回に1回! そんな状況で結成された、「CRAZY GAL ORCHESTRA」。まだ新しいオーケストラですが、私も一度、ぜひ公演に行ってみたいなと。

 この本には、ネイルアートに白鳥をあしらって演奏できるかなど、フリマらしいリラックスネタも載っていて、楽しいです。

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 ビブリオバトルですので「いちばん読みたくなった本」に投票したところ、票が割れましたが、『都市空間における管路の形態』と『CRAZY GAL ORCHESTRA MAGAZINE vol.1』の2冊がチャンプ本となりました!

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 今日はいい経験をした。なお、作る側というか売る側に回ると、もっとグッとくるらしいですよ! (下の写真は、私が買った本)

20240120文学フリマ京都で私が買った本の写真

 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)

2025年6月24日火曜日

第44回読書会 『〈弱いロボット〉の思考』


『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』(岡田美智男、講談社現代新書)の読書会を開催しました! 今回の読書会はちょっと、びっくりするくらい良かったです。

 本書曰く、会話は、「蟻の残した足跡」のように進むと。
 一つひとつのアイディアは、それぞれの学生から生まれてきたものであり、「あっ、なかなか鋭い!」とそれを学生の聡明さや発想力のようなものに帰属させてしまうこともできる。ただ学生に尋ねたならば、「いや、他の人の書き込みにつられて、たまたま思い浮かんだことなんです」などと答えることだろう。その発想を生みだせた要因は、学生たちの個々の思考とそれを取り巻く人とのあいだにわかち持たれたものなのだ。
 本書全体も「蟻の残した足跡」のように進むので、読書会も「蟻の残した足跡」のように進むのでした。

 今回の読書会は尋常じゃないくらい良くて、マジックリアリズムのように素晴らしかったんですけど、あまりに蛇行するので、記録できず!
 いつもは発言者と発言を特定して記録してるんですが、今回はできませんでした。なので話題や発言は概ねあったものですけど、順番などは創作も含んでます。
 「他者の想起内容と、自らの想起内容とがどこかで融合し、オリジナルはどちらなのかわからなくなってくる」という、本書に書いてあったことそのままの事態に!

 そんなわけですが、読書会の記録は次のとおりです。

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【Aさん】
 弱いロボットを蹴っちゃう子もいたりするんですけど、弱さというのがそのまま長所だとはいえないと思うんですよね。弱さが敬意や信頼につながってこそって、この本にも書いてあるけど、弱さが敬意や信頼になぜつながるかってことは、そんなに書いてない。

【Bさん】
 弱そうだと、かわいいからじゃない? これは日本人的なのかもしれない。日本のロボットはアトムもドラえもんも幼児体型だし。でもそうだとしても、弱そうだからかわいいとなるのは何でかっていう話にはなるか。

【Cさん】
 あと、かわいければいいのかっていう話にもなる。それで思い出すのは、『共感という病』(永井陽右)っていう面白い本があって、弱くてかわいくて困ってる子は助けてあげたくなるけど、キモくてハゲてて困ってるおっさんは誰も助けようとしないっていう。それでいいのかっていう。

【Dさん】
 なんでハゲw でもそれでいうと、よく考えたら、この本のロボットって、弱さとかかわいさを利用して他人を操ってるともいえますよね。

【Aさん】
 あー、それ思いましたね。誤解されたくないんですけど、弱さをあえて人前でみせるのを手法みたいに使う女性を思い出しました。

【Dさん】
 操る、なあ。そういえば、男性用の小便器のちょっと高い部分に777とかのシールを貼ったりする(飛び散りが少なくなって、清掃費用が少なくすむ)とかのテクニック、えー、なんだったっけ? 行動経済学とかの、無意識を使って社会を良くする的な。

【Cさん】
 ナッジかな。

【Dさん】
 そうそれ。ナッジについて書いてあった本(タイラー・コーエン『大格差』)に、「ナッジは良いものと捉えられているが、ナッジを設計する人が正しく判断するとは限らない」って。
 ていうか普通、無意識を利用して操るっていうのは、ヤなことのはずですよね。でもこの本はぜんぜんヤな感じがしないのはなぜだろう。

【Bさん】
 それはこの本に、制作過程が書いてあるからじゃないか。システムの狙いとかも含めて制作工程を楽しむような感じが、いいと思った。

【Eさん】
 私は、弱いロボットはブラック企業みたいだと思った。

【Dさん】
 ブラック企業!

【Eさん】
 人の善意を利用しちゃうという意味で。でも、そういう善意を利用するっていうのは、むしろロボットだからできるんじゃないかと思った。人が弱さを利用するって、やったらダメでしょう。そういう意味で、やっぱりロボットの可能性を感じた。

【Fさん】
 人が弱さを見せる、ねえ。弱さの見せ方もあると思う。この本にも書いてあるけど、どう困ってるか分かるかとか。
 昔は会社でヨタヨタしてる人がいたら、助けてあげようっていうより、イラッとした。でも今は助けてあげてる。昔はこっちに余裕がなかった。それを思うと、助けるようになるかは、弱さの見せ方にもよるけど、こっちに余裕があるかにもよると思う。

【Gさん】
 私も、会社で母をやってるw

【Fさん】
 できの悪い子と思えば、何でも許せるのよw

【Gさん】
 そうそう。優しくすると優しさが返ってくるから。優しさはお金のように回さないと。

【その他の印象的な発言】

【Hさん】
 私は街を散歩するのが好きなんですが、この本を読んで、街が私を散歩させる、と思った。

【Iさん】
 完璧に快適にしてもらうと、無駄なことをしたくなる。

【Jさん】
 ASIMOの「動歩行」は、むしろ倒れそうな力を利用するっていうんですけど、私の倒れそうな経験も力にすることができそうだと思ってよかった。弱いことはマイナスだけではないということが分かってよかった。

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 今回のデザートはフレンチトースト! 自料理自賛ですが、けっこうおいしくできた!

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 読書会って、本当にいいものですね。ではまた来月。


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2025年6月19日木曜日

第43回読書会 ビブリオバトル・テーマ「人間関係」


ビブリオバトルを開催しました。テーマは「人間関係」。やっぱ、なにもかも、人間関係ですよね! 豊作が期待できる…。

 以下の7冊が紹介されました。

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【1冊目】

『「人それぞれ」がさみしい 「やさしく・冷たい」人間関係を考える』(石田光規、ちくまプリマー新書)

 ようやく「人それぞれの社会」が到来したのに、息苦しくて生きづらいのは、世間の目で優劣をつけ個人の行動を縛る集団的体質は変わっていないから…ということを丁寧に解説してくれる本です。

 「親ガチャ/子ガチャ」を恐れて子どもを産まない選択をするようなエピソードがあったが、私も同様な恐れが大きかったけれど結局「案ずるより産むが易し」だった。リスクを避けて撤退するのと、リスクに飛び込める違いは、どこから生ずるのでしょうか。

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【2冊目】

『パワハラ上司を科学する』(津野香奈美、ちくま新書〉

 どういう状況だとパワハラが起こりやすいかなど、パワハラの様々な面について、データに基づいて明らかにしてくれます。このデータ重視が、とても好ましいです。

 著者はパワハラ防止の講師もしているんですが、受講者から、「何かパワハラになるか分からないので、部下にはあまり関わらないようにしようと思います」と言われることがあるらしいんです。でも著者によれば、それは全く誤解です。パワハラを最も起こすのは確かに支配型の上司なんですが、放置型の上司の下でもパワハラは生じやすい。適度な関わりが重要なんですね。

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【3冊目】

『夫に死んでほしい妻たち』(小林美希、朝日新書)

 夫に死んでほしい。実例がたくさん示されて、恐ろしい本です…。共働きなのに家のことは何もしない夫。投資に暴走して言うことを聞かない夫。離婚するより死んでくれたほうがお得。その他たくさん…。

 これは、残業などの日本の労働環境にも原因があるようなんですが、妻に死んでほしい夫はあまりおらず、夫に死んでほしい妻はたくさんいるということは、男性こそ、この本を読む必要があるということですよ…。ぜひ読みましょう。

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【4冊目】

『人間関係のレッスン』(向後善之、講談社現代新書)

 いい人でいようっていうのは、実は、いいことではないんです。

 いい人でいようという裏には、批判されたくないという気持ちがあります。でも、批判されたくないという気持ちは、しっかりした関係が築けないことにもつながって、最終的には失敗しがちです。しかも難しいのは、いい人は、特に幼少期に親の顔色をうかがって危険を回避してきたという、ある意味で成功体験があるために、失敗を認識しにくくなってしまっているんですね。

 その他も、人間関係についてとても実践的な本で、お勧めです。

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【5冊目】

『人はなぜ集団になると怠けるのか 「社会的手抜き」の心理学』(釘原直樹、中公新書)

 1対1で綱引きをしたときにその人が出す力を100とすると、2人対2人では93に下がります。そして8人対8人でやると、人はなんと、50の力しか出しません。
 ブレインストーミングは多くのアイデアを生みそうで、もてはやされていますが、実は一人一人がそれぞれアイデアを出すほうが、アイデアの量も質も上回ります。

 本書には、解決案も載っているのがいいですね。ブレインストーミングなら、途中から1人ずつ、参加人数を増やしていくなどです。

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【6冊目】

『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』(岡田美智男、講談社現代新書)

 この表紙の赤いロボットと青いロボットは、ゴミ箱ロボットです。なにをするかというと、ゴミにヨタヨタ近づいていって、その周りでマゴマゴします。マゴマゴするだけ。だけどそれを見るとつい、きれいにしてしまうんですね。

 ロボットは高性能であればあるほどいいはずですが、例えば高性能お掃除ロボットがいたとすると、ちょっとゴミが残っているだけで、憎しみまで生じてしまいかねません。ちなみに、ルンバが性能が低かったころからヒットしたのは、そのお世話感がいい感じだったのではないかと。著者によれば、ロボットも、関係性のなかで考えるべきだというのです。面白いです。

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【7冊目】

『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション』(三木那由他、光文社新書)

 会話というのは、言葉を媒介にして思いを伝えるもの、ではないというのです。

 例えば『パタリロ』では言葉とは逆の約束ごとが発生していますし、『同級生』では、好きだという思いは伝わっていても、「好きだ」と言ってほしい気持ちが表現されています。

 私は、学術書しか読まないし、腹芸が分からないし、情感がないんですが、そんな私でも、文芸って、やっぱりいいなあと。ぜひみんなで読んでみたい本です。

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 さてチャンプ本は…、『人はなぜ集団になると怠けるのか』、『〈弱いロボット〉の思考』、『会話を哲学する』の3冊の決選投票となり…、『〈弱いロボット〉の思考』がチャンプ本となりました! ワーワー!

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 料理のほうは新作、ムール貝ワイン蒸しです。なかなかいいのでは。

 では次回は、『〈弱いロボット〉の思考』の読書会です! 実に面白そう。来月も楽しみです。ではまた。


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2025年1月6日月曜日

第42回読書会 『独ソ戦』


新書読書会「連鎖堂」を行いました。今回の課題本は『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅、岩波新書)。新書大賞受賞の実力はいかに?

 結論から言うと、『独ソ戦』、ものすごくお勧めです。このテーマなのに興味深すぎて高速で読めちゃいますので、今こそ本当に、ぜひご一読を。

 以下、参加者から出た意見です。

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Aさん

 この本で最も驚いたのは、セヴァストポリ要塞攻略戦が、2行で書かれていたこと(135頁)。戦記物の読者としては、衝撃です。スターリングラード攻防戦に次ぐくらいの重要な戦闘で、ゆうに一冊書けますよ。

 この本の冒頭(ⅶ頁)にも書かれていますが、戦記物はドイツ軍将校の書いた文章をもとにしていることが多いので、戦記物読者は、ドイツ軍はヒトラーに妨害されて負けたと考える傾向があります。私も、ドイツ軍に責任がないとまでは思っていませんでしたが、ドイツ軍史観に影響されていたのだなと分かりました。

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Bさん

 1941年6月に対ソ開戦して、同年10月には独ソとも既にボロボロ、「グロッキーになった二人のボクサーに似たありさま」(72-73頁)なのに、それから3年半ももっと悲惨な戦闘を続けるというのが、すさまじい。

 スターリングラード駐留ドイツ軍は、ヒトラーの死守命令に従ったために包囲され、壊滅に追い込まれつつあった。ヒトラーは司令官パウルスを元帥に進級させ、「プロイセン・ドイツ軍の歴史において、元帥が降伏したことはない。元帥となったパウルスも最後まで戦うだろうとヒトラーは信じたのである」。ところがその翌日、パウルスとドイツ軍はソ連軍に投降、ヒトラーは激怒。パウルスは捕虜となった後、ナチス批判に傾き、「ついには、投降した将校を以て『ドイツ解放軍』を結成するとの案を出したが、ソ連側が、この計画を顧慮することはなかった」(164頁)。
 不謹慎だが、あまりに滑稽なので笑ってしまった。

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Cさん

 ヒトラーとスターリンのキャラクターがやはり印象的です。

 ヒトラーとスターリンがヨーロッパを支配するもう一つの世界を描いた『青い脂』(ウラジーミル・ソローキン)を読んでいるんですが、この二人の独裁者が手を組むという歴史ifものはよくあります。
 しかし、ヒトラーとナチス・ドイツの、劣等人種(ウンターメンシュ)視が実際とても強くて(ⅳ頁、81頁ほか)、ヒトラーとスターリンのタッグはifとしても成り立たないんだなということがよく分かりました。

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Dさん

 自らの粛清によって弱体化したソ連と、「快進撃」だけで補給を考えないドイツとの間で延々と続く悲惨な戦闘を読んでいると、栗城史多さんを思い出しました。熱く語って皆が賛同したストーリーに自ら囚われて、引くに引けないまま死地に赴くありさまが。

〔栗城史多(くりきのぶかず):「夢の共有」を掲げて華々しく活動し、毀誉褒貶のなかで滑落死した登山家。メディアを巻き込んで繰り広げられた彼の「劇場」(河野啓『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』紹介文より)〕

 星新一曰く、「戦争の真の恐ろしさは、殺人、飢え、破壊、死が発生するからではない。全員がいつのまにか画一化された思考になり、当然のことと行動に移すことにある」。本書を読んで心から同意できました。

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Eさん

 悲惨さがものすごいですが、これはイデオロギーとナショナリズムの融合によって生じた(220頁)というのが、最も印象的でした。ナショナリズムは、人々を盛り上げるには好都合ですが、それはどうやって止めるのか、と思います。そしてこの融合が、相手を人間と思わないところまでエスカレートさせています。

 『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』(ティモシー・スナイダー)を読んだときも思ったのですが、本書でも随所に書かれているように、この非人間性が、降伏するという選択肢を消してしまいます。そしてこれが、さらに悲惨を呼んでいるようです。

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Fさん

 5頁のスターリンの大粛清などスターリンもヒトラーも馬鹿だと思えてしまう。50頁の「ロシアはフランスではないと思い知らされる」の記述には、「民族によってそんなに違うのか?」と考えさせられた。2人についても、当時世界情勢全体についても自分が知らなさすぎることに今回気づいたので、次はヒトラーの生涯を書いた新書『アドルフ・ヒトラー 「独裁者」出現の歴史的背景』(村瀬興雄、中公新書)を読もうと準備している。

 『独ソ戦』の内容は教科書に載せて若い人にも学んで欲しい。

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Gさん

 戦争は、どうしても戦わざるをえない状況に追い込まれて始まる、のではない、と本書を読んで思いました。3章にあるとおり、戦争は非合理的な思考から始まっています。

 大学のころ、担当する主張をランダムに振り分けられたうえで、その主張を根拠づけるように論じ合って優劣を競うという、法学ディベートの授業がありました。
 今でも印象に残っているのが、憲法9条がテーマになった回です。私は当然、平和を重視する側が勝つと思っていたのですが、平和が大切というだけでは考えが足りていないということを思い知らされました。本書を読んで、戦争について考えるということを学べたと思います。

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Hさん

 戦記を読んだのはほぼ初めて。これほど面白いとは。しかも本書では同時に大局観も得られます。

 電撃戦が印象的です。電撃戦とは、突進部隊が、側背を顧みずに突進し、指揮・通信・兵站上の要点を覆滅、相手の抗戦能力をマヒさせたところで、後続の通常部隊に残存する敵部隊を撃滅させるという戦術。たとえるなら、巨人の神経や血管を切るもの。なるほど。

 そしてもっと印象的なのが、「ロシアはフランスではなかった」。現場のソ連軍部隊は、指揮系統を混乱させられ、補給路を断たれても、なお頑強に戦いつづけた。また、電撃戦を可能としてくれるはずの、舗装道路も、自動車用ガソリンスタンドも、ほとんどなかった。悲惨な泥仕合の要素が揃っています。

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Iさん

 前回この本を紹介したんですが、皆さんの評価が高くて、紹介して良かったです。

 この本はとても読み甲斐がありますが、写真も印象的ですね。地面を埋め尽くす戦死者の写真(165頁)や、地平線の果てまで捕虜が並んでいる写真(106頁)等。

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 料理の写真は、パプリカとマイタケのマリネ。あと、ちょっと調理方法を変えてみた24時間低温調理豚バラ肉が好評で嬉しかったです。

 しかし、すごい新書でした。こういうのが新書の醍醐味だ。ではまた来月!


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2024年7月7日日曜日

第41回読書会 ビブリオバトル・テーマ「大戦期ドイツ」

 

新書読書会「連鎖堂」、ビブリオバトルをおこないました! テーマは「大戦期ドイツ」です。今こそあの時代を考えたい。

次の7冊が紹介されました。

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【1冊目】

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅、岩波新書)

 独ソ戦は、双方のプロパガンダのために事実が表に出ず、まだしも分かりはじめたのはソ連が崩壊してから。しかし我々は今も、プロパガンダ時代の言説や、個人の戦争体験の物語に影響されています。本書で事実を知ることができる。全ての記述が印象的ですが、やはり悲惨さがすごく響きます。

 さらに、読んでいてぞくぞくしたのですが、歴史なのに、まさに今とオーバーラップするんです。というのも、独ソ戦の主な戦場がウクライナだからです。本書の刊行は2019年でウクライナ侵攻より前ですが、書かれる地名や、やっていることが、ウクライナ侵攻にかぶるのです。今こそ読みましょう。

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【2冊目】

『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』(仲正昌樹、NHK出版新書)

 全体主義というのは、「大衆の願い」を政策にしたもの。この大衆の願いというのは、安心させてくれる、わかりやすい物語です。そして本書によれば、わかりやすさには危険がある。わかりにくさに耐える必要があるというのです。

 本書はNHK100分de名著をもとにしたもので、あの分厚い(3冊合計1300ページ!)の『全体主義の起原』をコンパクトにまとめてくれています。お得です。ただ少し背反するんじゃないかと感じるのが、わかりにくさに耐えろといいながら、本書はとてもわかりやすいんですね。やっぱり『全体主義の起原』を読まないとな、と思いました。

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【3冊目】

『ヒトラー 虚像の独裁者』(芝健介、岩波新書)

 ヒトラーのせいだ、ヒトラーの責任だというのとはわかりやすいストーリーですが、本当にそれだけか。というのも、ヒトラーが大衆とともにあった、大衆がヒトラーを支持したという事実はあったからです。しかも私が思っていたよりも、その期間が長かった。敗戦が現実化してくるまで、支持があったようです。

 もちろん本書にはヒトラーの妄想や、ヒトラーだったからこその悪という面も書かれてはいますが、私は違う視点も得られたと思いました。

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【4冊目】

『ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか』(池内紀、中公新書)

 ドイツの一般人のなかには今も、ヒトラー統治時代を懐かしむ層が根強くいるという報道に接し、手に取ったのが本書です。

 ヒトラーが大衆に支持された背景として多額の賠償金、むごいインフレなど将来が展望できないような経済状況があった。そんな中で、ヒトラーの小気味の良い、二者択一を迫っていくようなスピーチが大衆には人気があった。
 ヒトラーは政権を握ってから当初の4年間は効果的な政策を連発し、仮にそこで他界していたらドイツ憲政史上もっとも有能政治家であったという評価が紹介されていた。ヒトラーが行った政策の中では、歓喜力行団(かんきりきこうだん)という、労働者に対して安価で質の良い旅行を提供するというものが、ナチス支持にもっとも大きなインパクトを与えたようだ。

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【5冊目】

『ナチスと隕石仏像 SSチベット探検隊とアーリア神話』(浜本隆志、集英社新書ノンフィクション)

 皆さんヒトラーですが、私はヒムラーで。親衛隊隊長ヒムラーがチベットへ探検隊を派遣して発見したという、仏像(表紙の写真)から始まる謎についての本です。

 ハーケンクロイツがしるされた仏像は、どうやら本当に隕石からできているようですが、これはいったいどういうものか? アーリア神話のルーツを示すのか? 仏像なのにズボンを穿いている? ルーン文字? 研究機関アーネンエルベ? というか、第二次世界大戦開戦1年前にチベット探検してる場合か?

 ヒムラーは農学部の出身で、家畜のように人間を育種する構想まで持っていたというのです。ナチスのオカルト的側面がわかって、とても面白いです。

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【6冊目】

『1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか ドイツ・システムの強さと脆さ』(飯倉章、文春新書)

 ドイツの特徴は、その容赦のなさ。長子相続に由来する権威主義が、軍隊の運用に向いていて、強いです。日本も長子相続で権威主義がありますが、和を以て貴しとなすという面もあります。ドイツには和はありません。欲望も剥き出しです。

 そうすると弱点は、まず作戦を共有しない。それから、弱いはずものが服従してこないと、ショックを受けて気を病んでしまう。そしてだんだん内側から崩壊してしまうというのです。とても説得的と思いました。

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【7冊目】

『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治、講談社現代新書)

 ヒトラー政権当時を追体験できるような、臨場感ある新書です。自分が当時ドイツに住んでいたとして、ヒトラーの台頭を防げたのか、と考えるんですが、実際、無理だったろうなと。

 ヒトラーの、最初は暴力で勢力拡張し、政権を取ったら専門職や経済エリートも取り込むという手並みが、防ぎにくい。逆にいうと、ボランティアで散々使われた挙げ句に、政権を取ったら秩序維持のために粛清(レーム事件)されたSA(突撃隊)の無惨さが印象的です。

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 以上7冊、なんか物凄いラインナップですが、投票の結果…、

 『独ソ戦』がチャンプ本、イコール次回読書会の課題本になりました。おめでとうございます! 新書大賞受賞の新書の実力はいかに? 次回乞うご期待!
 あと個人的には、ちょっと変化球の『ナチスと隕石仏像』が気になる。

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 料理のほうは、新作のエリンギガーリックバターが好評でした。

 いい新書が集まる…。自会自賛ですが、うーん、いいですね。また来月!


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2024年5月4日土曜日

第40回読書会 『ルールはそもそもなんのためにあるのか』

『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)

『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)の読書会を行いました! 初めての方にも参加いただき、嬉しかったです。

 課題本は法哲学というハードル高めの分野。でもちくまプリマー新書で読みやすいので貴重です。私は弁護士ですが、普段の業務(欠陥住宅訴訟が多い)では事実認定に注力するので、法哲学なんか考えないぞ! なのでこの本は新鮮で(笑)、すごく面白かったです。

 ルールについては喋りたくなるので、読書会も盛り上がりました。以下、参加者の意見です。

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【Aさん】

○ 著者は、リーグ戦の次戦の日程を有利にするために引き分け狙いの試合運びをすることを、フェアプレーのルールから批判してます(50-54頁)。でも、スポーツというのは、戦略も競うものでは? 私はこれがルール違反だとは感じないです。

○ エスカレーターの左側開けルールがなかなか変わらないって書いてあります(第6章)が、アイデアがあります! エスカレーターの一段一段の段差をすごく高くすれば(スキー場のリフトみたいな感じ。ステップの広さは車いすやベビーカーが乗れるくらい広くすると便利)、歩けなくなって一発で解決。システムのほうを変えて対応するっていう手があります。

Bさん そうすると、非常時に通れなくなっちゃいません?

○ じゃあ、簡単には上り下りできないけれど頑張れば上り下りできるぐらいの高さで! あと、横に階段を設置するのは必須ね(急ぐ人は階段使えルール)。

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【Bさん】

○ 反婚の考え(法的制度としての結婚そのものが不要。第4章)が、最も興味深いです。特定の結婚の仕方を法的に承認する制度があるから、どういう形態でないとダメとかイイとかいう問題になる。でも、結婚の制度がなければ、そもそもそういう不毛な話にならない。
 これはベーシックインカムにも通ずる話で、一律に給付すれば、給付のための基準は問題にならない。
 基準がなくてもやっていけるほど十分な資源があるなら、基準はいらないと思います。

○ アナーキズムであっても生じる秩序っていうのも、興味深い。ロールズの「二つのルール概念」論文で提示された「実践的見方」を援用している論述(56頁)とか。

 ただここで、この本にはけっこう大きな間違いがあって、参考文献に挙げられてるロールズの本は1冊、『公正としての正義 再説』(岩波現代文庫)だけです。でも「二つのルール概念」論文が収められているのは『公正としての正義』(木鐸社)であって、『再説』のほうは、主著『正義論』への批判に回答する内容の全く別の本です。こういうことをやられると、ロールズをちゃんと検討してるのかなと思ってしまって、信頼性が落ちるなあ。

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【Cさん】

○ 大学で、民俗学をとったんですけど、担任の先生は折口信夫先生の弟子のひとでした。
 担任の先生経由で折口信夫先生の調査を聞いたんですが、明治の終わりころだと、祭りの後などに乱交の風俗があって、父親が分からないということもよくあったとか。でも子どもは育っていく。父母だけで育てるというのではなくて、もう少し広いコミュニティで子育てするというのもありうることだなと思います。

○ 殺し屋に追われた親友が自分の家に逃げ込んできて、殺し屋から「逃げ込んできてないか」と問われたときに、それでもカントは、嘘をつくべきでないというんですね(44-47頁)。
 こういう状況になった時にどちらを取っても後悔するような気がして選択が難しいけれど、カントのような考え方もあるんだと思いました。

 Bさん その設例はカント研究者の間でもとても問題になっていて、嘘はつけないんですが、殺し屋と戦うというのは普遍ルールからアリですし、また、答えないというのも普遍ルールからアリっていうことのようですね。

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【Dさん】

○ 公共性と普遍性(41頁)について、ルールが示す価値観とは異なる価値観を持つ人に対しても、そのルールを守りなさいと言える根拠はなんだろう、というのが、最も考えさせられたところでした。多数決でルールを作るとすれば、全員の価値観に合致するルールを作ることは難しい。そうすると、価値観に関わるルールは最小限にしたほうがいいのかな、と思いました。

○ 法律家としては、価値観は時代と共に変化していくものなので、ハーバート・ハートが第2次的ルールとして「変更のルール」を挙げているのが興味深かった。(32頁)

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【Eさん】

○ 自然発生するルールという考え方が、とても面白かったです。ただ、ルールの設定者に都合のいいルールが成立するということは、やっぱりあるように思って、ジレンマを感じます。

○ また、ルールは普遍的であるべきとあって、私もそう思っていたんですが、状況が変わるとルールが変わる事例があるというのにも、なるほどと思いました。例えば「津波てんでんこ」では、弱いものを助けるというルールが避難を遅らせて被害を拡大するので、各自が高台を目指すというルールが成立しているとか(25-26頁)。

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【Fさん】

○ 著者のようにアナーキズムに立っても、合理的・功利主義的でないルールもあり得るというのが、最も面白かったです。サッカーで、弱いほうは手を使ってもいいというんでは、サッカーというゲーム自体が成り立たない。ゲームを成り立たせるためのルール(56-58頁)という視点を得ました。

○ 著者は、道徳とルールを混ぜるのが嫌いみたいで、私も嫌いなんですが、でも実務法曹としては、こんなことは許せん!という、道徳とルールを混ぜてるような人々こそが、ルールを支えている側面は否定できないと思うんです。

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【Gさん】

○ 長く生きていると、ルールがゆるやかに変化していくのを見ることができます。エスカレーターができてルールがなかったころから、左側開けのルールに変化して、それから歩かないルールへ、もうすぐ変化するのかな。電車の整列乗車だって、昔の大阪では誰もやってなかったんですよ。

○ この本全体の感想として、答えを明確にしないというか、踏み込みが浅いというか、ツッコミどころが多い。でもそういう本がむしろ読書会には向くんだな、というのを強く感じました。

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 議論百出で面白かった! 今日の料理は低温オーブン(100℃90分)で焼いた豚バラ、あとチキントマトクリームスープ。ではまた来月!


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2024年2月4日日曜日

第39回読書会 ビブリオバトル全国大会予選+エキシビション・マッチ「笑える本」


ビブリオバトル全国大会inいこまの予選 +エキシビション・マッチ「笑える本」を行いました。さすが全国への予選、渾身の一冊が紹介され、大接戦となりました!

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 しかし今回思ったんですが、連鎖堂のビブリオバトルでは、質問がたくさん出るのが嬉しいですね。

 私はなぜか質問がいくらでも出てくるので、また、どんな場所でも喋れるので、会場によっては私ばっかり質問しているみたいになることもあります。でも連鎖堂でのビブリオバトルでは、私が質問できないくらい、たくさん質問が出るのです。

 これはなぜかと尋ねれば、会場(キッチンスペース)の親密感というか、狭いけど賑わってるスナックみたいな密集感がいいのかもしれません。本日の参加者は10名でしたが、10名だと本当に満員です。

 私は、図書館の入口近くなど、オープンスペースで行うビブリオバトルも好きなんですが、本に集中するならやっぱりクローズドなのかもしれない。

 さて本題、紹介された本は以下のとおりです。

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【1冊目】
『親ガチャの哲学』(戸谷洋志、新潮新書)

 親ガチャという言葉は、絶望を呼ぶのではないか。親ガチャに外れたから、もうだめだという。

 そんな消極に対してハイデガーばりに主体的決断を強調すると、こちらは自己責任論を呼んでしまう。

 著者によれば、ソーシャルミニマム(最低限の生活)の保障が重要だというのですが、なかでも対話の場へのアクセスの保障を重視するところが、哲学カフェやビブリオバトルの実践者である著者らしい視点でした。

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【2冊目】
『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)

 連鎖堂にふさわしく、意見百出で議論が盛り上がりそうな新書を持ってきました。

 男性が家で小用を足すとき、便座に座らなければならないでしょうか。
 エレベーターでは左側(大阪)を開けなければならないでしょうか。
 マスクはしなければならないでしょうか。

 ルールには、一方では強制する力が必要なようです。しかし他方ではナッシュ均衡により自然に収束していく面もあるようです。

 著者は還暦過ぎの女性の法哲学者ですが、隙あらばガンダムや刃牙の話題をブッ込んでくるところも読みどころです。

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【3冊目】
『怪談の心理学 学校に生まれる怖い話』(中村希明、講談社現代新書)

 怪談を心理学から研究するのが珍しい。怪談の広がり方の調査が面白いです。例えば、流言の広がる速度の速さ。戦前でも、札幌から東京まで1日で伝播したとか。

 怪談は広がると変形しますが、尾ヒレがつくというよりも、核心部分が強調されたり意味づけされたりするようです。覚えやすく、興味を引くように語れるほうが広がるためです。
 人は意味を求めてしまう。実験によれば、意味のない図でも、人が写しとっていくたびに意味が加わってしまい、最後にはフクロウになったりするのです。

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【4冊目】
『鳥獣戯画の世界』(上野憲示監修、宝島社新書)

 「へーっ」と何度も言ってしまうこと請けあいの新書です。

 あのウサギとカエルだけが鳥獣戯画ではないですよ。そもそも甲乙丙丁と続いていて、もっとリアルな鳥獣も描かれています。
 作者の謎も面白いです。宮廷絵師系統なのか、仏師系統(特に密教系)なのか。その謎に、歴史や、絵のタッチからも迫ります。

 日本の漫画の原型とも言われる鳥獣戯画を堪能できるようになる新書、とてもおすすめです。

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【5冊目】
『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本』(宮部みゆき、中公新書ラクレ)

 ビブリオバトルに参加する前には、新聞の日曜日の書評欄を楽しみにしていました。特に宮部みゆきさんの書評を。印象に残ってる本は、絵本の『ゾンビで学ぶAtoZ』とか。

 ミステリへの書評だけでなく幅はとんでもなく広いです。彼女の平場の文章がいかに分かりやすいか、核心を衝いているか、味わってほしい。ビブリオバトルでの紹介の仕方の参考にもなると思います。

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 さて投票です。今回は特に素晴らしい新書が揃い、選ぶのにとても迷いました。皆様そうだったようで、大接戦にもつれ込み…、今月のチャンプ本、イコール全国大会へのチャンプ本は…、『そもそもルールはなんのためにあるのか』に決定しました! ワーワー! おめでとうございます!

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【エキシビションマッチ!】

 続きまして、エキシビションマッチ。テーマは年末年始に向けて、「笑える本」です。こちらの紹介はコンパクトに。

【1冊目】
『まるで本当のような嘘の話』(トキオ・ナレッジ、ワニブックスPLUS新書)
 ぐっすりの語源はグッドスリープ。嘘。

【2冊目】
『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ)
 あの人に、どうにかして後悔してもらいたい。

【3冊目】
『ロスねこ日記』(北大路公子)
 ネコがいなくなって寂しいなら、シイタケを愛でればいいんじゃないですか。

【4冊目】
『世界のマネージョーク集』(早坂隆、中公新書ラクレ)
 トムはジョージから100ドル借りたが、返すお金がない。そこでジョージに返済するため、マイクから100ドル借りた。マイクへ返済する期日が来たが、トムはやっぱりお金がない。そこでマイクへ返済するため、ジョージから100ドル借りた。ジョージへの返済期日には、またマイクから借りた。これを何度か繰り返した後、トムはジョージとマイクに言った。「もう面倒なので、あとはジョージとマイクでやり取りしてくれないか」 HAHAHA!

 チャンプ本は『世界のマネージョーク集』! HAHAHA!

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 今回の料理は、新作のサバトマトチーズスープなど! おいしいと言っていただけて嬉しかったです。

 いやー、今回の新書は素晴らしかった。終わった後この文章を書いているときも幸せを感じるほどです。ではまた! 


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2023年12月17日日曜日

第38回読書会 『構図がわかれば絵画がわかる』


 読書会と美術館観覧を、合体! 「構図がわかれば浮世絵が分かる」を開催しました。土曜の午前から、『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)の読書会を行い、そのあと大阪浮世絵美術館に皆で行って観覧、という試みです。

 結果、すごく楽しかったです!

 読書会には、課題本のほか、お気に入りの画集もお持ちいただきました。これも大当たりで、お気に入りの画集を持ちよって見せ合うと楽しい、ということが分かりました。
 構図がわかると、絵が違って見える。お気に入りの絵もさらに深く鑑賞できるようになるのです。

 以下、読書会で出た意見です。ページ数は『構図がわかれば絵画がわかる』のページです。

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【Aさん】

 永井豪が描く、大量の悪魔が復活する場面は、逆さにした《紅白梅図屏風》にそっくり。逆三角の曲線で。この逆三角形(54頁)は、ムンクの《叫び》と同じ効果ですよ。悪魔復活の不安感がすごいと思ったら、そういう秘密があったとは。

『画業50周年突破記念 永井GO展 展覧会図録』掲載

《紅白梅図屏風》

《叫び》

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【Bさん】

 光文社新書のこの表紙、「三角形」(50頁)が絶妙です。で、思考実験としてこの「白黒」(184頁)を反転してみると、おそらく黒が下側だと安定しすぎるんじゃないか。
 また、アランちゃんの位置も絶妙で、上から3分の1程度の、この「点」(11頁)にいるしかない。白い部分とか、もっと上にいたら、締まらないと思います。
 加えて、アランちゃん後ろにある影、地平線も絶妙。こんなに小さいのに「水平」(38頁)を感じさせます。

 構図に気をつけて改めて見ると、装幀のアラン・チャン(香港のデザイナー)、さすがと思いました。


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【Cさん】

 パオロ・ウッチェロ(ルネサンス初期イタリアの画家)が好きで、本書で紹介されている《森の狩人》も素晴らしい。


 私が特に好きな、ウッチェロ《聖ゲオルギウスと竜》にはバージョンが2つあります。



 私は上の絵がいいと思うんですが、この絵でポイントとなる槍が、上の絵では「対角線」(41頁)になってます。これが効いてるんじゃないか。下の絵は上の絵よりも、全体にちょっとボヤけた感じを受けます。

 同じ画家の同じテーマの絵なのに、構図でやっぱり違いますね。

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【Dさん】

 切り絵作家の藤城清治さんが好きで、展覧会にもよく行ってます。以前、展覧会のアンケートに答えたら、事務局から「藤城さんがアンケートのお答えに喜んでいます」というお手紙とカードが届いて、とても嬉しかったです。

 特に好きな《アリスのハート》は、切り絵で生まれる光と影で遠近感が出ていると思います。真ん中のハートや木の形は「逆三角形」(52頁)の技術が使われていて、緑とオレンジなど補色の技術も発見できました。


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【Eさん】

 一つの絵の中で「時間」の経過を表す技法が、西洋にもあります(126頁)が、日本の絵巻には、まさに時間が描かれます。

 国宝《信貴山縁起絵巻》は通常の絵巻同様、時間は右から左へ進むんですが、「剣の護法」という童子の登場シーンから次の行動シーンは左から右へのコマ割りで展開されます。このように時間の流れが交錯するため、童子の存在はとてもインパクトがあるんです。


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【Fさん】

 山口晃の画集を持ってきました。この、絵巻物みたいな絵が大好きなんです。

 山口晃の絵は細部こそが主役という感じなんですが、『構図がわかれば絵画がわかる』を読んで、全体の構図も素晴らしいと気づきました。
 《大阪市電百珍圖》では逆三角形の構図(52頁)が大阪市を浮遊させるような効果を生んでいると思いますし、《當世おばか合戦》では円の構図(76頁)が永遠を顕しているのでは。

《大阪市電百珍圖》(ウェブ上に全体図はアップされていないようです)

《當卋おばか合戦》


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【Gさん】

 佐伯祐三が好きです。

 《下落合風景》に描かれた電柱、真ん中の一番高いものは「垂直」(19頁)ですが、その他の電柱は中央に向かってやや傾いています。《パリ雪景》の家屋も中央へ傾いてる。これはあえて垂直を外すことで、奥行き感を出そうとしたんでしょうか。



 本では、セザンヌ《セント・ヴィクトワール山とアーク川渓谷の橋》について、画面の左右での「複数の視点」が指摘されてます(113頁)。
 佐伯祐三《勝浦風景》は、画面の上から下へに、「複数の視点」があると思いました。絵の下のほうには崖から見下ろした船が描かれ、絵の上のほうは遠くを見た波や水平線が描かれているのに、絵の全体としては一体感があります。まさに海岸に立って海を見ているようで、凄いと思います。


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【Hさん】

 私は、なんといってもビアズリー推しで。100年くらい前に出版された、オスカー・ワイルド『サロメ』の現物を持ってきました。やっぱり本はガラスケースの中じゃなくて、手に取れないと。

 「垂直」(19頁)が強いです。服の襞のラインも横の要素がなく、シルエットも縦に長く見えます。血がしたたり落ちる「垂直」も印象的です。



 《プラトニックな歎き》では、「垂直」とともに、「水平」も効果的に用いられています。人体の「水平」は、死を感じさせると書かれていますが(34頁)、この絵にはまさに、死が強く漂っています。


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 読書会の後は、皆で大阪浮世絵美術館「二人の天才 -葛飾北斎・月岡芳年-」展に行きました。心斎橋のど真ん中にあるコンパクトな美術館です。しかし、構図の本を読んだ後に北斎・芳年を観に行くっていうのは、大正解でした。

 いまさらかもしれませんが、北斎の構図、絶妙ですね。《甲州石班沢》の、富士山の稜線と漁師の投網が共鳴するような構図の素晴らしさ。
 分かりやすいといえば分かりやすいですが、『構図がわかれば絵画がわかる』を読んだからこそ、北斎の構図の妙を、より強烈に感じたのですよ! きっと!


 さらにそのあと喫茶店に行って、シフォンケーキを食べながら、絵画談義をするという…。

 とても面白かった! えもいわれぬくらいの、読書会的満足を得たのでした。

 ではまた。


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2023年12月9日土曜日

第37回読書会 ビブリオバトル・テーマ「推せる楽しみの新書」


今回のテーマは、「推せる楽しみの新書」。自分の(読書以外の)楽しみを、皆に紹介してあわよくば広げようという試みです。

 結果、予想を超えて多様な新書が集まりました!

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【1冊目】

『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』(春日武彦、中公新書)

 私は子どものころから、怖い話と聞くと読みたくなるんですが、それがなぜだろうと思って読んでみました。

 でも実は、恐怖は定義しにくいというんです。
 例えば、テントウムシが1匹いるとかわいいだけですが、テントウムシが沢山いると怖くなる。集合体恐怖っていうらしいんですが、それがなぜなのか、きちんと解明されているわけではない。
 それでもこの本は、恐怖をいわば腑分けして、正体を探ってくれます。ですので、自分にとっての恐怖の本質を考えることもできると思います。

 あと、怖い本の紹介としてもおすすめです。

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【2冊目】

『藤井聡太論 将棋の未来』(谷川浩司、講談社+α新書)

 将棋のタイトルを狙う上位棋士は、一年を通じて、挑戦権を得るための選抜マッチを行っているようなものです。名人戦では、挑戦権を得るまででも、何年もかかる。
 ですので、それを八冠(羽生時代では七冠)とるというのが、いかに凄いことか。この本には、名人の系譜も書かれています。

 これを中学生棋士の先輩、当時の最年少記録を次々に塗り替えた、谷川さんが書いたというのが、とてもいいですね。

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【3冊目】

『大学で学ぶゾンビ学 人はなぜゾンビに惹かれるのか』(岡本健、扶桑社新書)を読んだ。

 私はゾンビものを推します。ゾンビはなぜこんなにも魅力的か。それは、極限状態のシミュレーションという面が大きいんじゃないでしょうか。皆がゾンビになっていく状況、パンデミックになったら、いったいどうなってしまうのかという。

 そういう状況では、今回のコロナ禍がまさにそうでしたが、社会によって対応に違いが出る。つまり、ゾンビを考えることは、社会を考えることになるんですね。

 あとは、ゾンビのようなエンターテイメントを、ただ楽しむだけではなくて、研究する方法を、卒論の書き方のように教えてくれるというのもこの本のいいところです。どんな趣味でも、それを究めるための参考になるという意味でもおすすめです。

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【4冊目】

『科学の横道 サイエンス・マインドを探る12の対話』(佐倉統、中公新書)を読んだ。

 私は理系なんですが、全くオタク気質でないというか、あまりのめり込まないところがあります。自分のやっている研究についてだけ延々と嬉々として話すっていうタイプの人、いますよね。私はそういうことはなくて、そのことにコンプレックスを感じたこともありました。

 この本は、それでもよい、と言ってくれた本です。著者と多様な職種の人との対談集なんですが、とても楽しくて、科学の捉え方にも色々あるんだと教えてくれました。科学の美しさとか、科学と文学とか、科学と介護とか。

 イギリスでは一般の人でも気軽に科学館に行くような、穏やかなサイエンス・マインドがあるようで、そういうのはとてもいいなと思いました。

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【5冊目】

『仏像図解新書』(石井亜矢子、小学館101新書)

 私は仏像を推します。仏像について知りたいなら、この本がおすすめです。

 例えば、その仏像がどのくらい尊いものなのか、仏像だけから分かります。尊いほうから、如来・菩薩・明王・天部なんですが、例えば螺髪(らほつ)、パンチパーマみたいなやつですね、それがあるのは如来だけ。だから大仏は、大きいだけじゃなくて、如来だから尊いんです。

 不動明王はあんなに怖い顔をしておられますが、じつは大日如来の化身なので、慈悲深いんです。不動明王に化身するのは、怒られたほうが煩悩から立ち直りやすいタイプの人を救うためなんですね。

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【6冊目】

『続セルフ・コントロール』(池見酉次郎ほか、創元新書)

 人間関係に悩むことがありまして、そういうときの私の推しは、交流分析です。

 まさに人間の交流を分析するんですが、特に、人間関係のゲームの類型を教えてくれるところがお勧めポイントです。
 例えば、「イエス・バットゲーム」というのは、相手に「そうだけど、でも…」と必ず返すというもので、これは相手の時間を奪ってやりたいというか、かまってもらえなかったことから来るゲームなんですね。実は私自身が「イエス・バットゲーム」をやってしまいがちで、ああ、私は「イエス・バットゲーム」をやってるな、と気づけたことがあります。

 他には、迷惑系YouTuberみたいな「キック・ミーゲーム」とか。このゲームを仕掛けてくる人には、注目そのものが報酬として働きますので、無視の一択ですよ。

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【7冊目】

『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)

 絵そのものの印象、作者や文化史を知らなくても感じる、ファーストインプレッションは、どこから来るんでしょうか。それはやっぱり構図でしょう。

 この本は、点から始まって、垂直線、水平線、三角形、遠近法、色といった構図から、絵の魅力を語ってくれます。

 例えば、ダ・ヴィンチ《聖アンナと聖母子》と、ピカソのキュビズムの名作《アビニョンの娘たち》は、技法も思想も時代も、ぜんぜん違う絵ですが、構図には共通点があります。なにもかも違うように見えるこの2つの絵には、共通のものがあるのです。

 我々は、ただ絵を見ているだけでも無意識に構図を感じているのですが、それを知った上で見ると、また新たな絵の魅力に気づくと思います。

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 以上7冊、ホラー、将棋、ゾンビ、科学文化、仏像、交流分析、絵画ときた!
 仏像まで! 多様すぎる!

 もうどれがチャンプ本となるのか全然わかりませんが、投票の結果、ゾンビ・科学文化・絵画の決選投票となり…。

 チャンプ本は
『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)
となりました! おめでとうございます。

 そこで来月の読書会は、チャンプ本を課題本にした、「構図がわかれば浮世絵がわかる」(読書会&美術館)です!

 新書を読んで構図がわかったうえで、皆で美術館に行ってみよう! という。我ながら楽しみなイベントでございます。新書は皆で読めるからいいですよね。

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 料理の写真は豚バラ肉のタマネギスープがけ。今回は初参加者もいらして、とても嬉しかったです。ではまた。


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2023年11月30日木曜日

第36回読書会 『過剰可視化社会』


『過剰可視化社会』(與那覇順)、読書会レポートです。この本は論争的で、対談部分も噛み合っていて、読書会も盛り上がりました。

 以下、参加者から出た意見です。

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【Aさん】

 「一度でも『ネガティブな衝突は起きてはいけない』という未然防止的な優しさが煮詰まった現在」(77ページ)というところ、とても共感できた。決して人と衝突してはいけない、というのは違うと思う。

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【Bさん】

 表現が攻撃的で合わない。また、過剰だと判断する基準が示されないため、著者の気分で過剰だと決めてるように思えてしまう。

 著者は「マイノリティを『キラキラさせる』ことでPRする社会運動の限界」を指摘している(75ページ)けど、あまり賛成できない。
 例えば、「車いすでもあきらめない世界をつくる WheeLog! みんなでつくるバリアフリーマップ」(https://wheelog.com/hp/)という活動があるが、著者ならこれもキラキラ過剰というかもしれない。でも私は良い活動だと思うし、このように車いすユーザーが「可視化」されることは、世界を良くすると思う。

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【Cさん】

 可視化というよりもデジタイズの問題点だと思った。

 人をキャラ付け、プロフィールにタグ付けするリスクが指摘されている(72-74ページ)。ただ、人格などの曖昧なものに名前をつける、範囲を限定すると、処理しやすくなる、つまり楽になる側面がある。どんなデジタイズでもそうだが、功罪の両側面があると思う。

 人のキャラ付けの部分を読んでいると、かなり昔に読んだ実存主義を思い出した。人には、ラベルがつけられる前にも、「実存」があるという。

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【Dさん】

 私もデジタイズの問題だと思った。そして、デジタイズの対極にあるのが身体性だと捉えることができる。
 例えば、こうやって対面で話しているなら、うっかり間違ったことを言ってもすぐに分かってもらえるが、デジタイズされた世界では、ローコンテクストというか、文脈が無視されて、誤解されたままとなってしまう。デジタイズがいくら進んでも、身体性は軽視できないと思う。

 ただ、著者は歴史学者への絶望を強調したりしているが、むしろ人文学への期待が、それこそ「過剰」ではないか。

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【Eさん】

 私は、カテゴリー化の部分が最も面白かった。特に、著者と対談相手の東畑さんの間で、議論が噛み合うところが。
 著者がカテゴリー化の危険を強調するのに対し、東畑さんが、臨床からみたカテゴリー化の効用を指摘する。議論の結論としては、カテゴリーへの当てはめは、治療のきっかけなどの「スタート」となりうるところは有用だが、カテゴリーへの当てはめが「ゴール」となってしまうと、個人としての人生や苦悩が無視されてしまうという。

 これは、私の仕事では、交通事故訴訟のような高度にカテゴリー化された事件を扱うときに感じていたことを、言いあててくれているように思った。

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【Fさん】

 仕事でHR(Human Resources)のデジタル化、人材情報の可視化を行っているが、これでいいのかと思うこともあった。

 人をキャラ付け、タグ付けすることによって、一部の情報だけでその人を判断してしまうようになるリスクが指摘されている(72ページ以下、76-77ページなど)が、納得できる。
 人材情報の可視化は、突然の退職の防止や、生産性の上昇には資するはずだが、その人のことを深く考えなくなるという危険がある。

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【Gさん】

 メディアを鵜呑みにするべきではないというところ、重要だと思う。

 コロナ禍で、メディアに登場する専門家は人流抑制を強調したが、それは無批判に受け入れられるべきではなかったという批判(43ページ)、共感できる。
 私が当時、特にえげつないなと思ったのは、パチンコ店や風俗店へのバッシング。パチンコ店にも風俗店にも思い入れはないが、叩けるから叩いているように見えた。しかもいわゆるリベラルなグループでさえ、それぞれの人の自由よりも、社会的な正しさを重視していた。すごく違和感がある。

→Dさん
 リベラルには2種類あるのではないか。個人の自由を重視するタイプと、最低限の権利確保を重視するタイプの2つが。高齢者がコロナで死亡しやすいことから、後者の意味でのリベラルが目立ったのではないか。
 しかしアガンベン曰く、動物としての生存を重視すると、人間としての生存が抑圧されてしまう。このあたりについては、『私たちはどこにいるのか? 政治としてのエピデミック』(ジョルジョ・アガンベン)がとても面白かった。

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【Hさん】

 私はこの本は共感できるところが多かった。特に、「何が不要不急かを、勝手に決められたくない」というのが、強くそう思う。

 キラキラしている人を決めて称賛することで社会を操るというのは、スターリンの技法だ(51ページ)、というのは非常に面白い。
 最近思うのは、メディアに出てくる高齢者が、むやみに元気だ。これは人生の最後の最後まで元気で生産しろという、現代日本のスターリズムではないか。

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 メディアに出てくるキラキラ高齢者は、現代日本のスターリズム! パワーワードですね。(本に出てくる言葉ではなくて、参加者によるパワーワードです。)この先、メディアにキラキラ高齢者が出てくるたびに、思い出してしまいそう。

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 写真はレモン風味のグリルチキン。今回は焼き色は良い感じですが、味にムラがある…。チキン一つ焼くのも難しいですね。

 ではまた!


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2023年8月30日水曜日

第36回読書会 ビブリオバトル・テーマ「不安に対処するための新書」


新書読書会「連鎖堂」を開催しました。今回はビブリオバトル。テーマは「不安に対処するための新書」です! 不安を鎮めようと思いまして。

 以下の6冊が紹介されました。

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【1冊目】
『過剰可視化社会 「見えすぎる」時代をどう生きるか』(與那覇潤、PHP新書)

 今の社会は見えれば不安はなくなるとばかりに、全てを可視化しようとしてますが、可視化できない、表現できないものがあります。例えば「赤」と言えば、あの「赤」ね、と分かったようではありますが、本当はどんな赤なのか分かっていません。全て見えるという前提は誤っています。

 私としては、コロナ禍とその後の違和感が解消できました。社会編も個人編も、その後の対談パートも、とても面白いです。

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【2冊目】
『「認められたい」の正体 承認不安の時代』(山竹伸二、講談社現代新書)

 承認と自由はトレードオフの関係にあります。人から認められたければ、我慢するしかありません。承認には、他者に依存する側面があるのです。親しい間柄での承認にも、集団内での承認にも。どうすれば親や恋人から承認されるかよく分かりませんし、除草剤を撒けば集団内では承認されるのかもしれませんが…。

 しかし、一般的承認、普遍的価値を目指す承認なら、自分で自分を認めつつ自分勝手ではないという、他者に依存しない承認もありえます。それは、自分の欲望と自分がすべきこととをよく見て、折り合いを付けるという方法で、可能かもしれません。

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【3冊目】
『自己肯定感という呪縛 なぜ低いと不安になるのか』(榎本博明、青春新書INTELLIGENCE)

 なぜ最近こんなにも、自己肯定感なのか。

 日本人は自己肯定感が低いといわれますが、それは単に日本語のアンケートの聞き方かもしれません。日本語ができる外国人に日本語のアンケートを答えてもらうと、「とてもそう思う」と答える人は減って、「ややそう思う」が増えます。

 自己肯定感を上げればうまくいくと言われますが、順序が逆です。なにかがうまくいっているから、自己肯定感が上がるのです。それに、自己肯定感が低いからダメだと言われても、対処のしようがありません。

 またそもそも、自己肯定感が高けりゃいいというものではありません。不安には不安の役割、効用があるのです。

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【4冊目】
『どうせ死ぬのになぜ生きるのか 晴れやかな日々を送るための仏教心理学講義』(名越康文、PHP新書)

 人は予想不能のものに不安を覚えます。最も典型的なものは死で、過去その不安を解消するために使われたのは宗教でした。

 著者は精神科医ですが、けっこうストレートな仏教推しでした。末尾には般若心経の全文が掲載されてます。
 善行を積みましょうというような、ある種ベタですが、ただ、不安の解消は、ベタにしかできないのかもしれない、と思いました。

 ブッダから4000年経っても、同じようなことをやっています。宗教というのは、価値と行動を繋げる体系として生き残っているだけあって、うまくできてるものだな、と思いました。

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【5冊目】
『定年バカ』(勢古浩爾、SB新書)

 充実した定年に備えようという色々な「定年本」を、バッサバッサと切り捨てるスタイルの本です。その切り捨て方が徹底していて小気味良いほど。

 著者の考えの根底には、定年後は何をしても自由なので、逆に何もしない自由だってもっと認められるべきという考えがある。また、充実した定年後のためには前もって備えることが必要という主張に対しては、「備えなくたっていい。今までもなんとかなってきたし、定年したってなんとかなる」というスタンス。

 個人的には定年を考える年齢になってきましたが、定年に対する世間の意見とは一線を画するこんな見方もあるんだなと、参考になった。

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【6冊目】
『増えるものたちの進化生物学』(市橋伯一、ちくまプリマー新書)

 進化心理学はとてもおすすめの概念ですので、ぜひお持ち帰りいただきたい。

 増えて遺伝するものが生じれば、自動的に、不安や幸福は生じるというのです。というのも、危険を回避するために不安を感じ、繁殖を有利にして幸福を感じるものたちが、そうでないものたちよりも、増えるからです。われわれは増えるものたちの末裔で、不安や幸福を完全に無視することなどできないのです。

 しかし、それが単に自動的に生じるものだと知っているだけで、まだしも対処することができるようになるでしょう。

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 どの本も面白そうですが、どうでしょう、不安を鎮めるならどの本?

 投票の結果、同票で『過剰可視化社会』『自己肯定感という呪縛』『増えるものたちの進化生物学』の決選投票となり…。

 なんと決選投票も3対3対3で決着つかず、ジャンケンの結果、『過剰可視化社会』がチャンプ本となりました! ですので次回は『過剰可視化社会』の読書会です。

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 写真は豚バラ肉のワイン煮込み。今回はパプリカのマリネが好評でした。

 ではまた来月、いい新書とともにお会いしましょう。


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2023年7月22日土曜日

特別回3回 『ネガティブ・ケイパビリティ』


今回は特別会、課題本型の読書会で、本は『ネガティブ・ケイパビリティ』(帚木蓬生)です。

 で、何が特別かというと、私のもとに突然NHKから連絡がありました。「ネットで見つけた連鎖堂さんの『ネガティブ・ケイパビリティ』の感想が面白かったので、連絡させてもらいました」「8月末頃の放映で『ネガティブ・ケイパビリティ』の特集をします。そこで、読書会を取材させていただけませんでしょうか」という。

 そこで読書会を開いたんですが、しかし皆さん、カメラが入って全国放映されるかもしれないというのに、いつもどおりというか、自由というか、好き勝手でした!
 いやー、楽しかったですね。テンションが上がりました! 長いこと本の投稿をしていると、こういうこともあるなと。

 以下、参加者から出た意見です。

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Aさん
  •  ウイルフレッド・R・ビオン(精神科医)の言葉「ネガティブ・ケイパビリティが保持するのは、形のない、無限の、言葉ではいい表わしようのない、非存在の存在です。この状態は、記憶も欲望も理解も捨てて、初めて行き着けるのだと結論づけます」(58頁)の部分、映画「2001年宇宙の旅」を思い出した。この映画は、人工知能HALが狂って危機に陥ったとき、HALの記憶を抜いていくことによって航行を継続でき、ついに木星=ジュピター(理性の象徴)を超えて進んでいくんですが、そこから終わりまでの圧倒的な映像を思い出すだけでもドーパミンが出る。この映画は、何故か特に男性が色々と解釈しようとしてくれるけど、解釈なんかしないほうが、あの謎を楽しめると思った。
  • Hさん その映画にはカタルシスはあるんですか?
  • Aさん カタルシスを求めることはネガティブケイパビリティの対極にあるのよ!

Bさん
  •  理解しにくいところもあり、ネガティブ・ケイパビリティを学ぶことでネガティブ・ケイパビリティが鍛えられる、と思った。
  •  なぜ理解しにくいか考えてみたところ、「否定」の難しさがあるのではないか。否定というのは抽象的なので。ただ、否定神学(「神は何でないか」から考える神学)など、否定から切り込むことはありうるかもしれない。
  •  自分の人生の選択で考えてみると、「こうやったことで解決したんだ」と自分に言い聞かせていたところがあったが、ネガティブ・ケイパビリティの考え方で、こういう言い聞かせをやめることができたように思う。

Cさん
  •  ビブリオバトルで紹介してもらって読んで以来、もう4回も読んだ。しんどいときには読むようにしている。周りの、潰れそうな方にも薦めている。
  •  私は行方を案じすぎてしまうんですが、この本で、解決だけを求めないということを学んだ。今のその時を楽しんで味わえればよいというような。

Dさん
  •  研究に必要な「運・鈍・根」はネガティブ・ケイパビリティに通じているという話(194頁)が印象的だった。昔、科研費をいただいたとき、結果が出なくてすごく焦った。そのときは利根川進さんの本を読んで耐えようと思ったが・・・。社会に余裕がないと、学問の大きな成果は出ないと思う。
  •  私は何でも分かりたがる、答えを求めてしまうタイプなので、しんどいことが多い。
  • Hさん でも、Dさんが撮らはった映画は、むしろ答えを示してなかったような・・・。
  • Dさん 作り手となると違うんです。そういえば、私が一番好きなチェロの「無伴奏チェロ曲」は、よくわからないのにそのまま受け止めることができた。

Eさん
  •  6頁で「何かを処理して問題解決をする能力ではなく、そういうことをしない能力」とネガティブケイパビリティの概念が書かれているので、理解したつもりで読み進めていったが、メルケル首相など具体例がいろいろ出てくるとよくわからなくなった。ただ78頁でポジティブケイパビリティについてとの比較の記載を読むまでは「ネガティブ」と「ネイティブ」を読み違えていたこともあり「人間に本来備わる」というような良い意味に捉えて読むことができた。
  •  自然療法で学んでいる聖ヒルデガルドやバッチ博士の著書によく「中庸であれ」という言葉が出てくる。それに通じるものがあるので、今後理解が深まると思う。

Fさん
  •  なんでもすぐ検索して、答えを言う人が苦手です。黒井千次「知り過ぎた人」の話(75頁)にはとても共感できた。そんなにすぐ答えなくてもいいのに、と思う。
  •  広い視野、「頂点」を持つ(57-58頁)というのも共感できた。人にはそれぞれ、考え方や性格など良いところがある。頂点を意識して人と接したいと思っている。

Gさん
  •  ネガティブ・ケイパビリティには、少なくとも2つの意味があると思う。①解釈しないという意味と、②答えを出さないという意味(いわば待機戦略)。これを今一歩、分別できてないのではないか。
  •  私としては①を、自動的に生じうる解釈を止めることは可能かという意味でもっと知りたかったが、なしくずしに②の話が混じってきてしまっている。

Hさん
  •  世の中には、そう簡単に解決できない問題が満ち満ちている(192頁)というのが、強く同感。
  •  私は弁護士だし、もともとは完全に問題解決志向。客観的な問題が解決すれば、全て解決する。なんなら、主観なんてない、みたいな。しかし、ちゃんと勝てなかった案件でも感謝されることはあるし、勝訴しても真の問題はぜんぜん解決してないこともある。職種が違うんで、解決を目指さないことはないけど、私が入ることによって、マシになる案件なら、入る意味があると思った。

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 いい本でした。実際、私は『ネガティブ・ケイパビリティ』を、重要な概念だと思っているのです。分からない、解決できない、でも平気っていう。

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 料理のほうは、暑くなってきましたが、しかしポーク! バルサミコソースでさっぱりと。

 では来月は、いい新書とともにお会いしましょう。