2025年6月24日火曜日

第44回読書会 『〈弱いロボット〉の思考』


『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』(岡田美智男、講談社現代新書)の読書会を開催しました! 今回の読書会はちょっと、びっくりするくらい良かったです。

 本書曰く、会話は、「蟻の残した足跡」のように進むと。
 一つひとつのアイディアは、それぞれの学生から生まれてきたものであり、「あっ、なかなか鋭い!」とそれを学生の聡明さや発想力のようなものに帰属させてしまうこともできる。ただ学生に尋ねたならば、「いや、他の人の書き込みにつられて、たまたま思い浮かんだことなんです」などと答えることだろう。その発想を生みだせた要因は、学生たちの個々の思考とそれを取り巻く人とのあいだにわかち持たれたものなのだ。
 本書全体も「蟻の残した足跡」のように進むので、読書会も「蟻の残した足跡」のように進むのでした。

 今回の読書会は尋常じゃないくらい良くて、マジックリアリズムのように素晴らしかったんですけど、あまりに蛇行するので、記録できず!
 いつもは発言者と発言を特定して記録してるんですが、今回はできませんでした。なので話題や発言は概ねあったものですけど、順番などは創作も含んでます。
 「他者の想起内容と、自らの想起内容とがどこかで融合し、オリジナルはどちらなのかわからなくなってくる」という、本書に書いてあったことそのままの事態に!

 そんなわけですが、読書会の記録は次のとおりです。

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【Aさん】
 弱いロボットを蹴っちゃう子もいたりするんですけど、弱さというのがそのまま長所だとはいえないと思うんですよね。弱さが敬意や信頼につながってこそって、この本にも書いてあるけど、弱さが敬意や信頼になぜつながるかってことは、そんなに書いてない。

【Bさん】
 弱そうだと、かわいいからじゃない? これは日本人的なのかもしれない。日本のロボットはアトムもドラえもんも幼児体型だし。でもそうだとしても、弱そうだからかわいいとなるのは何でかっていう話にはなるか。

【Cさん】
 あと、かわいければいいのかっていう話にもなる。それで思い出すのは、『共感という病』(永井陽右)っていう面白い本があって、弱くてかわいくて困ってる子は助けてあげたくなるけど、キモくてハゲてて困ってるおっさんは誰も助けようとしないっていう。それでいいのかっていう。

【Dさん】
 なんでハゲw でもそれでいうと、よく考えたら、この本のロボットって、弱さとかかわいさを利用して他人を操ってるともいえますよね。

【Aさん】
 あー、それ思いましたね。誤解されたくないんですけど、弱さをあえて人前でみせるのを手法みたいに使う女性を思い出しました。

【Dさん】
 操る、なあ。そういえば、男性用の小便器のちょっと高い部分に777とかのシールを貼ったりする(飛び散りが少なくなって、清掃費用が少なくすむ)とかのテクニック、えー、なんだったっけ? 行動経済学とかの、無意識を使って社会を良くする的な。

【Cさん】
 ナッジかな。

【Dさん】
 そうそれ。ナッジについて書いてあった本(タイラー・コーエン『大格差』)に、「ナッジは良いものと捉えられているが、ナッジを設計する人が正しく判断するとは限らない」って。
 ていうか普通、無意識を利用して操るっていうのは、ヤなことのはずですよね。でもこの本はぜんぜんヤな感じがしないのはなぜだろう。

【Bさん】
 それはこの本に、制作過程が書いてあるからじゃないか。システムの狙いとかも含めて制作工程を楽しむような感じが、いいと思った。

【Eさん】
 私は、弱いロボットはブラック企業みたいだと思った。

【Dさん】
 ブラック企業!

【Eさん】
 人の善意を利用しちゃうという意味で。でも、そういう善意を利用するっていうのは、むしろロボットだからできるんじゃないかと思った。人が弱さを利用するって、やったらダメでしょう。そういう意味で、やっぱりロボットの可能性を感じた。

【Fさん】
 人が弱さを見せる、ねえ。弱さの見せ方もあると思う。この本にも書いてあるけど、どう困ってるか分かるかとか。
 昔は会社でヨタヨタしてる人がいたら、助けてあげようっていうより、イラッとした。でも今は助けてあげてる。昔はこっちに余裕がなかった。それを思うと、助けるようになるかは、弱さの見せ方にもよるけど、こっちに余裕があるかにもよると思う。

【Gさん】
 私も、会社で母をやってるw

【Fさん】
 できの悪い子と思えば、何でも許せるのよw

【Gさん】
 そうそう。優しくすると優しさが返ってくるから。優しさはお金のように回さないと。

【その他の印象的な発言】

【Hさん】
 私は街を散歩するのが好きなんですが、この本を読んで、街が私を散歩させる、と思った。

【Iさん】
 完璧に快適にしてもらうと、無駄なことをしたくなる。

【Jさん】
 ASIMOの「動歩行」は、むしろ倒れそうな力を利用するっていうんですけど、私の倒れそうな経験も力にすることができそうだと思ってよかった。弱いことはマイナスだけではないということが分かってよかった。


 今回のデザートはフレンチトースト! 自料理自賛ですが、けっこうおいしくできた!


 読書会って、本当にいいものですね。ではまた来月。


 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)