ビブリオバトルを開催しました。テーマは「少数派」。
以下の8冊が紹介されました。様々な少数派の本をどうぞ!
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【1冊目 Aさん】
『土葬の村』(講談社現代新書、高橋繁行)
日本は火葬大国。しかしほんの数十年前まで、土葬も普通に行われていました。しかも日本の火葬はお骨を墓の下に納めるもので、土葬の名残がある。全てを灰にしてしまう徹底的な火葬とは違います。土葬は別世界のものではないんです。
土葬に手間がかかるのが印象的でした。死後硬直よりも前に埋められる体勢にしなければならないとか、あとやっぱり場所の問題とか。
その他、日本にもあった風葬や鳥葬、沖縄の土葬など、様々な弔いが心にのこります。
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【2冊目 Bさん】
『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書、望月優大)
移民についての議論は色々ありますが、まずそもそも、移民は既にいる(人口の2%強)、というのが出発点であるはずです。しかし、日本は単純労働の移民を受け入れない、という建前があるため、既にいる移民が議論されず、不可視となっています。
入局管理局に与えられている裁量の大きさに驚きます。そこには議論がなく、それ以前に、議論の材料となるべき実態が知られていません。それを知るためには、堅いテーマですがリーダブルな本書、お勧めです。
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【3冊目 Cさん】
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書、伊藤亜紗)
目の見えない人の世界は、目が見える人が目をつぶった世界とは、ぜんぜん違います。
目の見える人は、世界を2D的に把握しています。対して、目の見えない人は、模型などで世界を学ぶこともあって、世界を3Dで把握しています。「視覚がないから死角がない」というのが面白い。例えば皆さん、万博公園の「太陽の塔」には顔がいくつあると思いますか? 2つ? 違います。「背面」にも1つ顔があるので、3つです。目の見えない人はこれを間違いにくい。目の見える人は、「前面」からのビジュアルを思い出すのですが、目の見えない人は「背面」もちゃんと把握しているのです。
Fさん
サッカーの名手は自分や状況を鳥瞰できると聞いたことがありますが、それは目の見えない人の世界と関係がありますか?
Cさん
いやおっしゃるとおりで、メッシの状況把握は、ブラインドサッカーでの把握と似ていると書いてありました。
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【4冊目 Dさん】
『女装と日本人』(講談社新書、三橋順子)
歴史が面白いんですが、社会学的な分析も鋭いです。例えば、「パス絶対主義」について。女装者における、男性だとバレないことに強い価値をおく意見です。
しかし著者によれば、女装だとバレていても、女の格好をして女として振る舞っていれば(doing female gender)、相手も「女扱い」してくるというのです。「日本社会では、バレたからといって相手の態度が百八十度変わるというものではないのです(稀にそういう人もいますが)」
そういう女扱いについて、「『それは配慮パスだから、ほんとうのパスではない。意味がない』と否定するパス至上主義の性同一性障害者は、あまりにも現実の社会を知らなさ過ぎます。世の中というものは、相互の配慮で成り立っているのですから」。うーん、なるほど。
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【5冊目 Fさん】
『日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る』(ブルーバックス、播田安弘)
ブルーバックスを持ってきましたが、ブルーバックスなのに、日本史ですよ。本書のような日本史の理系的把握、とても面白いです。
例えば秀吉の中国大返し。素早い決断だというような話で済ませずに、実際、どんな困難が生じるのか、分析してみるのが本書です。秀吉の軍は、30㎏の荷物を担いで1日あたり30㎞の道のりを8日間続けて踏破し、その後に戦ったというのですから、すごいのは決断力だけではないことが実感としてわかります。
その他にも、元寇の神風、日本海海戦の敵前大回頭などが分析的に検討され、興味津々です。
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【6冊目 Gさん】
『白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」』(中公新書、渡辺靖)
白人はこの先、少数派に転落することが人口統計から明らかです。
自分は差別主義者ではないという白人ナショナリスト曰く、少数派に転落することの恐怖や、移民を制限するべきだという考えを口にすると、差別主義者と呼ばれる。「日本に毎年、数百万人の移民が来て、それに反対すれば差別主義者と言われたら、どう思いますか?」
白人ナショナリズム、思ったよりずっと複雑で、重い問いだと思いました。
Dさん
アメリカはそもそも、移民の国では?
Gさん
先に来たほうが偉いということになっているようです。
Dさん
えええ。うーん。
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【7冊目 Hさん】
『知の仕事術』(インターナショナル新書、池澤夏樹)
インターナショナル新書の001番、個人編集で世界文学全集と日本文学全集を出すという偉業をはたした池澤夏樹さんが、初めてその読書術などを公開したもの。おすすめです。
さて本日のテーマは「少数派」ですが、本書の「はじめに」を読んでみましょう。
「ものを知っている人間が、ものを知っているというだけでバカにされる。ある件について過去の事例を引き、思想的背景を述べ、論理的な判断の材料を人々に提供しようとすると〔…〕、それに対して「偉そうな顔しやがって」という感情的な反発が返ってくる。」
どうですか皆さん、お互いに新書を紹介しあって遊ぶなんて、たいがい少数派を自覚しないといかんですよ!
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【8冊目 Iさん】
『カーストとは何か インド「不可触民」の実像』(中公新書、鈴木真弥)
カーストの根本は職業固定のようで、その意味では世界のどこにでもあるものと思います。
しかし、インドのカーストは根強い。インド政府はカーストを崩そうとしていますし、カーストと関係のない宗教も沢山ありますし、カーストと関係がなかった分野(ITなど)のほうが参入規制がなくて発展したという経済的現実もあるのに、複雑に絡まり合って、難しい。
例えば、被差別カースト出身者に大学入学の優先枠を与えると、合格発表でカーストが明らかになって、逆に固定化してしまうのはないかとか。というか、そもそも全ての合格発表にカーストが書かれる、というのには驚きました。やはりカーストの国ですね。
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さて、どの本が読みたくなったか投票しますと…、僅差の中、『土葬』『女装』『日本史サイエンス』の決選投票となり…、さらに僅差で『土葬の村』がチャンプ本に選ばれました! ワーワー!
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今回の料理は、低温調理豚バラのバルサミコソース・湯むきしたプチトマトのマリネ・牡蠣のリゾット・エビとズッキーニのソテー。料理は私一人で作ってますので、改めて写真で見ると、これを25分くらい?(もちろん読書会前の下準備は別)でサーブできるようになったのは、手際がよくなったもんだ、と思ったことでした。この後、クリームチーズとあんずジャムのカナッペと、フレンチトーストもサーブしてます。
では次回は、『土葬の村』でお会いしましょう!

