2024年2月4日日曜日

第39回読書会 ビブリオバトル全国大会予選+エキシビション・マッチ「笑える本」


ビブリオバトル全国大会inいこまの予選 +エキシビション・マッチ「笑える本」を行いました。さすが全国への予選、渾身の一冊が紹介され、大接戦となりました!

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 しかし今回思ったんですが、連鎖堂のビブリオバトルでは、質問がたくさん出るのが嬉しいですね。

 私はなぜか質問がいくらでも出てくるので、また、どんな場所でも喋れるので、会場によっては私ばっかり質問しているみたいになることもあります。でも連鎖堂でのビブリオバトルでは、私が質問できないくらい、たくさん質問が出るのです。

 これはなぜかと尋ねれば、会場(キッチンスペース)の親密感というか、狭いけど賑わってるスナックみたいな密集感がいいのかもしれません。本日の参加者は10名でしたが、10名だと本当に満員です。

 私は、図書館の入口近くなど、オープンスペースで行うビブリオバトルも好きなんですが、本に集中するならやっぱりクローズドなのかもしれない。

 さて本題、紹介された本は以下のとおりです。

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【1冊目】
『親ガチャの哲学』(戸谷洋志、新潮新書)

 親ガチャという言葉は、絶望を呼ぶのではないか。親ガチャに外れたから、もうだめだという。

 そんな消極に対してハイデガーばりに主体的決断を強調すると、こちらは自己責任論を呼んでしまう。

 著者によれば、ソーシャルミニマム(最低限の生活)の保障が重要だというのですが、なかでも対話の場へのアクセスの保障を重視するところが、哲学カフェやビブリオバトルの実践者である著者らしい視点でした。

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【2冊目】
『ルールはそもそもなんのためにあるのか』(住吉雅美、ちくまプリマー新書)

 連鎖堂にふさわしく、意見百出で議論が盛り上がりそうな新書を持ってきました。

 男性が家で小用を足すとき、便座に座らなければならないでしょうか。
 エレベーターでは左側(大阪)を開けなければならないでしょうか。
 マスクはしなければならないでしょうか。

 ルールには、一方では強制する力が必要なようです。しかし他方ではナッシュ均衡により自然に収束していく面もあるようです。

 著者は還暦過ぎの女性の法哲学者ですが、隙あらばガンダムや刃牙の話題をブッ込んでくるところも読みどころです。

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【3冊目】
『怪談の心理学 学校に生まれる怖い話』(中村希明、講談社現代新書)

 怪談を心理学から研究するのが珍しい。怪談の広がり方の調査が面白いです。例えば、流言の広がる速度の速さ。戦前でも、札幌から東京まで1日で伝播したとか。

 怪談は広がると変形しますが、尾ヒレがつくというよりも、核心部分が強調されたり意味づけされたりするようです。覚えやすく、興味を引くように語れるほうが広がるためです。
 人は意味を求めてしまう。実験によれば、意味のない図でも、人が写しとっていくたびに意味が加わってしまい、最後にはフクロウになったりするのです。

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【4冊目】
『鳥獣戯画の世界』(上野憲示監修、宝島社新書)

 「へーっ」と何度も言ってしまうこと請けあいの新書です。

 あのウサギとカエルだけが鳥獣戯画ではないですよ。そもそも甲乙丙丁と続いていて、もっとリアルな鳥獣も描かれています。
 作者の謎も面白いです。宮廷絵師系統なのか、仏師系統(特に密教系)なのか。その謎に、歴史や、絵のタッチからも迫ります。

 日本の漫画の原型とも言われる鳥獣戯画を堪能できるようになる新書、とてもおすすめです。

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【5冊目】
『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本』(宮部みゆき、中公新書ラクレ)

 ビブリオバトルに参加する前には、新聞の日曜日の書評欄を楽しみにしていました。特に宮部みゆきさんの書評を。印象に残ってる本は、絵本の『ゾンビで学ぶAtoZ』とか。

 ミステリへの書評だけでなく幅はとんでもなく広いです。彼女の平場の文章がいかに分かりやすいか、核心を衝いているか、味わってほしい。ビブリオバトルでの紹介の仕方の参考にもなると思います。

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 さて投票です。今回は特に素晴らしい新書が揃い、選ぶのにとても迷いました。皆様そうだったようで、大接戦にもつれ込み…、今月のチャンプ本、イコール全国大会へのチャンプ本は…、『そもそもルールはなんのためにあるのか』に決定しました! ワーワー! おめでとうございます!

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【エキシビションマッチ!】

 続きまして、エキシビションマッチ。テーマは年末年始に向けて、「笑える本」です。こちらの紹介はコンパクトに。

【1冊目】
『まるで本当のような嘘の話』(トキオ・ナレッジ、ワニブックスPLUS新書)
 ぐっすりの語源はグッドスリープ。嘘。

【2冊目】
『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ)
 あの人に、どうにかして後悔してもらいたい。

【3冊目】
『ロスねこ日記』(北大路公子)
 ネコがいなくなって寂しいなら、シイタケを愛でればいいんじゃないですか。

【4冊目】
『世界のマネージョーク集』(早坂隆、中公新書ラクレ)
 トムはジョージから100ドル借りたが、返すお金がない。そこでジョージに返済するため、マイクから100ドル借りた。マイクへ返済する期日が来たが、トムはやっぱりお金がない。そこでマイクへ返済するため、ジョージから100ドル借りた。ジョージへの返済期日には、またマイクから借りた。これを何度か繰り返した後、トムはジョージとマイクに言った。「もう面倒なので、あとはジョージとマイクでやり取りしてくれないか」 HAHAHA!

 チャンプ本は『世界のマネージョーク集』! HAHAHA!

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 今回の料理は、新作のサバトマトチーズスープなど! おいしいと言っていただけて嬉しかったです。

 いやー、今回の新書は素晴らしかった。終わった後この文章を書いているときも幸せを感じるほどです。ではまた! 


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