2023年12月9日土曜日

第37回読書会 ビブリオバトル・テーマ「推せる楽しみの新書」


今回のテーマは、「推せる楽しみの新書」。自分の(読書以外の)楽しみを、皆に紹介してあわよくば広げようという試みです。

 結果、予想を超えて多様な新書が集まりました!

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【1冊目】

『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』(春日武彦、中公新書)

 私は子どものころから、怖い話と聞くと読みたくなるんですが、それがなぜだろうと思って読んでみました。

 でも実は、恐怖は定義しにくいというんです。
 例えば、テントウムシが1匹いるとかわいいだけですが、テントウムシが沢山いると怖くなる。集合体恐怖っていうらしいんですが、それがなぜなのか、きちんと解明されているわけではない。
 それでもこの本は、恐怖をいわば腑分けして、正体を探ってくれます。ですので、自分にとっての恐怖の本質を考えることもできると思います。

 あと、怖い本の紹介としてもおすすめです。

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【2冊目】

『藤井聡太論 将棋の未来』(谷川浩司、講談社+α新書)

 将棋のタイトルを狙う上位棋士は、一年を通じて、挑戦権を得るための選抜マッチを行っているようなものです。名人戦では、挑戦権を得るまででも、何年もかかる。
 ですので、それを八冠(羽生時代では七冠)とるというのが、いかに凄いことか。この本には、名人の系譜も書かれています。

 これを中学生棋士の先輩、当時の最年少記録を次々に塗り替えた、谷川さんが書いたというのが、とてもいいですね。

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【3冊目】

『大学で学ぶゾンビ学 人はなぜゾンビに惹かれるのか』(岡本健、扶桑社新書)を読んだ。

 私はゾンビものを推します。ゾンビはなぜこんなにも魅力的か。それは、極限状態のシミュレーションという面が大きいんじゃないでしょうか。皆がゾンビになっていく状況、パンデミックになったら、いったいどうなってしまうのかという。

 そういう状況では、今回のコロナ禍がまさにそうでしたが、社会によって対応に違いが出る。つまり、ゾンビを考えることは、社会を考えることになるんですね。

 あとは、ゾンビのようなエンターテイメントを、ただ楽しむだけではなくて、研究する方法を、卒論の書き方のように教えてくれるというのもこの本のいいところです。どんな趣味でも、それを究めるための参考になるという意味でもおすすめです。

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【4冊目】

『科学の横道 サイエンス・マインドを探る12の対話』(佐倉統、中公新書)を読んだ。

 私は理系なんですが、全くオタク気質でないというか、あまりのめり込まないところがあります。自分のやっている研究についてだけ延々と嬉々として話すっていうタイプの人、いますよね。私はそういうことはなくて、そのことにコンプレックスを感じたこともありました。

 この本は、それでもよい、と言ってくれた本です。著者と多様な職種の人との対談集なんですが、とても楽しくて、科学の捉え方にも色々あるんだと教えてくれました。科学の美しさとか、科学と文学とか、科学と介護とか。

 イギリスでは一般の人でも気軽に科学館に行くような、穏やかなサイエンス・マインドがあるようで、そういうのはとてもいいなと思いました。

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【5冊目】

『仏像図解新書』(石井亜矢子、小学館101新書)

 私は仏像を推します。仏像について知りたいなら、この本がおすすめです。

 例えば、その仏像がどのくらい尊いものなのか、仏像だけから分かります。尊いほうから、如来・菩薩・明王・天部なんですが、例えば螺髪(らほつ)、パンチパーマみたいなやつですね、それがあるのは如来だけ。だから大仏は、大きいだけじゃなくて、如来だから尊いんです。

 不動明王はあんなに怖い顔をしておられますが、じつは大日如来の化身なので、慈悲深いんです。不動明王に化身するのは、怒られたほうが煩悩から立ち直りやすいタイプの人を救うためなんですね。

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【6冊目】

『続セルフ・コントロール』(池見酉次郎ほか、創元新書)

 人間関係に悩むことがありまして、そういうときの私の推しは、交流分析です。

 まさに人間の交流を分析するんですが、特に、人間関係のゲームの類型を教えてくれるところがお勧めポイントです。
 例えば、「イエス・バットゲーム」というのは、相手に「そうだけど、でも…」と必ず返すというもので、これは相手の時間を奪ってやりたいというか、かまってもらえなかったことから来るゲームなんですね。実は私自身が「イエス・バットゲーム」をやってしまいがちで、ああ、私は「イエス・バットゲーム」をやってるな、と気づけたことがあります。

 他には、迷惑系YouTuberみたいな「キック・ミーゲーム」とか。このゲームを仕掛けてくる人には、注目そのものが報酬として働きますので、無視の一択ですよ。

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【7冊目】

『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)

 絵そのものの印象、作者や文化史を知らなくても感じる、ファーストインプレッションは、どこから来るんでしょうか。それはやっぱり構図でしょう。

 この本は、点から始まって、垂直線、水平線、三角形、遠近法、色といった構図から、絵の魅力を語ってくれます。

 例えば、ダ・ヴィンチ《聖アンナと聖母子》と、ピカソのキュビズムの名作《アビニョンの娘たち》は、技法も思想も時代も、ぜんぜん違う絵ですが、構図には共通点があります。なにもかも違うように見えるこの2つの絵には、共通のものがあるのです。

 我々は、ただ絵を見ているだけでも無意識に構図を感じているのですが、それを知った上で見ると、また新たな絵の魅力に気づくと思います。

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 以上7冊、ホラー、将棋、ゾンビ、科学文化、仏像、交流分析、絵画ときた!
 仏像まで! 多様すぎる!

 もうどれがチャンプ本となるのか全然わかりませんが、投票の結果、ゾンビ・科学文化・絵画の決選投票となり…。

 チャンプ本は
『構図がわかれば絵画がわかる』(布施英利、光文社新書)
となりました! おめでとうございます。

 そこで来月の読書会は、チャンプ本を課題本にした、「構図がわかれば浮世絵がわかる」(読書会&美術館)です!

 新書を読んで構図がわかったうえで、皆で美術館に行ってみよう! という。我ながら楽しみなイベントでございます。新書は皆で読めるからいいですよね。

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 料理の写真は豚バラ肉のタマネギスープがけ。今回は初参加者もいらして、とても嬉しかったです。ではまた。


 (月1回土曜午前に読書会を開催しています。詳しくはココをクリック!)