2020年12月28日月曜日

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)

『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン)を読んだ。

 我々の思考は、全部レトリックです。難しい抽象概念も、身の回りの比喩から積み上げていって理解しているのです。例えば、論理は食べ物。論理を味わい、咀嚼し、消化し、あるいは口に合わず、アレルギーを起こす。また例えば、議論は戦い。論陣を張り、不意打ちしたり、罠を仕掛けたり、丁々発止と渡り合ったり。

 また我々は、新しい比喩を創り出すこともできます。それは物事を新しい側面から眺めること。新しい比喩が概念体系に入り込めば、行動も変わる。つまり新しい比喩は、新しい現実の創造でもあるのです。

2020年12月24日木曜日

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』(レイ・カーツワイル)を読んだ。

 面白い。ていうか面白すぎる。いいですか、我々の千倍も兆倍も頭がいいAIが、2045年には誕生する! いや、その「頭がいい」って何ですか? そりゃ人間を兆倍も優秀にしたものですよ! ちょっ、ちょっと待ってください。

 コンピュータの処理速度も、脳スキャン装置の解像度も、倍々ゲームで進化しています。もはや脳の複雑さは処理可能な範囲です。だったら脳をリバースエンジニアリングして、クロック数は兆倍じゃい。そして我々はナノテクノロジーで銀河系を制覇する。本当にそう書いてあるんです。

2020年12月23日水曜日

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)

『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(笹原和俊)を読んだ。

 いいね!を押せば、性格が漏れ出す。いいねが150個あれば、性格(ビッグファイブ因子)を家族と同じくらい正確に予測できます。いいね千回超? もはやあなたを一番知ってるのはfacebook。

 ソーシャルメディアは情報の質よりも、クリック数やシェア数など広告収入につながるものを高く評価する仕組みになっています。しかし、「ユーザは個人情報を差し出し、プラットフォームはターゲティング広告で儲けるというビジネスモデルが、情報生態系の持続的発展に利するのかどうか考え直す時期にきている」

2020年12月22日火曜日

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)

『人間知性研究』(デイヴィッド・ヒューム、斎藤繁雄・一ノ瀬正樹訳)を読んだ。

 前から読みたかったヒュームに挑戦してみた。さすが古典、自分の頭で考えるのはこういうことかと思ったことでした。一ノ瀬正樹解説も面白いです。

 ヒュームによれば、知識は、アプリオリな理論によって得られるのではありません。ある出来事に続いていつも別のある出来事が生じる(恒常的な連接)のを見いだすという経験によって得られます。しかもこれは一種の自然的本能であって、人間に特別なものではない。ヒューム曰く、犬も知識を有する。理性も自然の一種であって、何か別の抽象世界の産物ではないのです。

2020年12月18日金曜日

『ヘイト・スピーチという危害』(ジェレミー・ウォルドロン)

『ヘイト・スピーチという危害』(ジェレミー・ウォルドロン)

『ヘイト・スピーチという危害』(ジェレミー・ウォルドロン)を読んだ。

 令和の記念に、川岸令和(のりかず)教授の訳書に挑戦。ヘイトスピーチの法規制に賛成するものです。

 ヘイトスピーチ規制は、米国では違憲の意見が強い。人を説得するのを法で禁じてはならないのです。少数派を寄生虫だとか言う人は、まさに人々をそう説得したいわけで、法で禁圧してよいのか。本書が誠実に示す反対意見には、強い説得力と整合性がある。賛成の論拠は「公共的地位が奪われないと安心できることは公共財」ですが、やや曖昧。なのに著者の主張に説得される不思議な構成です。ぜひ自ら体験されたし。

2020年12月17日木曜日

『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』(桑木野幸司)

『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』(桑木野幸司)

『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』(桑木野幸司)を読んだ。

 今、暗記がマイブーム。読んだ本を暗記すると、私の中に、知識の連環の樹が育っていくような快感があるのです。

 そこで本書です。ギリシアに始まる記憶術は、脳内に建物を立ち上げ、部屋等ごとに覚えたいことのイメージを配置し、仮想的に建物に入っていって思い出すものです。こうしていけば、得た知識を配置した記憶の都市と共に、「知を丁寧にかみしめ、いつくしむ人生を歩むことになる」。「データを次から次に消費しては、何ら心に留めることなく捨てていく現代人と、どちらが『知恵を愛する者』だろうか」。

2020年12月9日水曜日

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)

『旧約聖書の誕生』(加藤隆)を読んだ。

 キリスト教、ユダヤ教は特異な宗教です。なんとご利益がないのです。

 古代では民族の戦いは神の戦いでもあり、民族が負ければその民族の神も捨てられ消えるのが普通でした。ところがユダヤ民族では、南北王国のうちまず北王国のみが滅亡したため、ヤーヴェが捨てられませんでした。そして神が守ってくれなかったのは、神の力が足りなかったのではなく、民に罪があったためである、とされました。その結果、「神の意が分からなくとも、どんなに悲惨な状態になっても、神を捨ててはならない」となったのです。

2020年12月7日月曜日

『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)

『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)

 『経済史 いまを知り、未来を生きるために』(小野塚知二)を読んだ。

 超面白い。中世では価格は常に一定でした。ではいったい、どこから資本主義が現れたのでしょう。王様と商人? 職人ギルド? 都市市場? ブー。正解は農村。奢侈品は余剰を分配するだけで生産力を上げませんし、ギルドや市場では他の構成員より多く儲ける奴は排除されました。目立たずに少しずつ効率化することができた農村内商工業こそが、生産力を上げたのです。

 設計されたユートピアや伝統復古は、実現できたことがありません。理念やニュースなんて重要じゃない。目立たない日常こそが歴史を変えるのです。