「食」テーマの新書、けっこう多いですね。さすが新書、身近で、掘り下げかたが多様で、とても興味深かったです。
次の4冊が紹介されました。
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1冊目
『給食の歴史』(藤原辰史、岩波新書)
給食に、いい思い出ありますか?
給食にはマイナス面があります。戦後のアメリカの農業保護の側面や、画一的な食を強制する側面もあります。
しかし給食には、明らかなプラス面もあるのです。子どもの擁護、貧困対策、また、災害対策にもなります。読んでいると、「給食はまずいとか言ってごめんなさい」という気分になりました。
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2冊目
『「おふくろの味」幻想 誰が郷愁の味をつくったのか』(湯澤規子、光文社新書)
最も面白かった指摘は、「おふくろの味」は、女性が料理をする前提になっている、というのは気づきやすいと思いますが、そもそも「おふくろ」という言葉は男性しか使わないので、二重にジェンダーが反映されているという指摘です。
実際、「おふくろの味」という言葉を定着させたのも、辻勲(辻学園調理・製菓学校創始者)または土井勝とされており(異説あり)、男性です。
また、「おふくろの味」にはジェンダーのほか、都市化の進行という時間軸・都市への移住という距離軸も反映されている(故郷の味という側面もある)というのも面白かったです。
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3冊目
『「食べること」の進化史 培養肉・昆虫食・3Dフードプリンタ』(石川伸一、光文社新書)
食の過去・現在・未来ですが、未来についての記述が最もエッジが効いてます。
過去は人類進化史から始まるのですが、ヒトは加熱調理によって消化にエネルギーを費やさなくてよくなり、そのぶん大脳が発達した、というのです。
そして未来、例えば、ニュートリゲノミクス(栄養ゲノム学)は、個々人の遺伝的特質を解析して最適な栄養を与えられるようになるかもしれない。さらに3Dプリンタで、見た目は同様なのに、栄養は人それぞれカスタマイズされているかもしれない。無重力状態での乳化しやすさを利用した宇宙チャーハンなども面白いです。
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4冊目
『「美味しい」とは何か 食からひもとく美学入門』(源河亨、中公新書)
美味しさは客観的か、主観的か。
美味しさは、知識なしに純粋に味わうべきか、知識を持って味わうべきか。
美味しさは言語化できるか。
料理は芸術か。
こういう問いが、なんと順を追って分かるように説かれています。哲学の丁寧さが分かります。
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以上4冊、どの本が最も読みたくなりましたでしょうか? 厳正な投票の結果…、
チャンプ本は『給食の歴史』。満票(発表者以外の全員が投票)です!
そこで次回は、『給食の歴史』(藤原辰史、岩波新書)を課題本とする読書会です。
給食にはいろんな思い出もあるので、読書会も盛り上がりそう。給食について喋りたい!