2020年8月31日月曜日

『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)

 『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)


『逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想』(小林一三)を読んだ。

 予想外、ちゃんとしてない。新卒入社しても行かない。新婚すぐ愛人と有馬温泉に泊って離婚、等々。宝塚歌劇は三越少年音楽隊との競争上の「イーヂーゴーイングから」「元来私は音痴である」。なんでそんなこと自伝に書くの。

 しかし彼の理想と事業こそが、中産階級を生みました。欧州旅行の感想に、「〔デモクラット発祥の地は〕さぞ大衆の芸術も盛んで立派であろうと考えて行って見ると、…芸術はブルジョワの手に独占され…、民衆のためには、単に富籤、犬のレース…。これで健全な大衆の成長があるだろうか」。


2020年8月27日木曜日

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(ルトガー・ブレグマン)

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(ルトガー・ブレグマン)を読んだ。

 超面白い。なんかもう、ベーシックインカム(無条件現金交付)と1日3時間労働しかありえないですよ。AIのせいで中間技能の職が激減する。格差が甚大になると失職不安や社会問題の増大で全員が苦しむ。既に、人類の供給力は全人類を食わせるに足りるんだから、だったら必要なのは、「今世紀のどこかで、生きていくには働かなければならないというドグマを捨てることだ」。

 現金交付は人を腐らせる? エビデンスに反します。ベーシックインカムが現に機能した事例が豊富にある。いや本当、これしかないですよ。

2020年8月24日月曜日

『モリー先生との火曜日』(ミッチ・アルボム)

『モリー先生との火曜日』(ミッチ・アルボム)
 

『モリー先生との火曜日』(ミッチ・アルボム)を読んだ。

 超面白い、超お勧め、読みやすい。社会学の教授モリー先生と、その元教え子で今は大忙しのスポーツコラムニストになった著者は、毎週火曜、二人だけで授業を行いました。ただし先生は筋萎縮性側索硬化症を発病し、死の床にあります。足から徐々に硬化していく中でも先生は知性に溢れ、家族、仕事、老い、死について話し合ったのです。


 人は死ぬ。死ぬ前になれば分かる。人生で重要なのは、業績なんかじゃない。「自分を許せ。人を許せ。待ってはいられないよ、ミッチ。誰もが私みたいに時間があるわけじゃない」。

2020年8月21日金曜日

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー)

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー)

『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』(マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー)を読んだ。

 儒教老荘、面白い。孔子曰く、「祭ること在(いま)すが如くし、神を祭ること神在すが如くす」。つまり儀礼は「かのように」行う。

 孔子曰く、人間関係の本質は儀礼です。例えば、夫婦が愛している「かのように」言葉を交わしているとき、まさに、お互い愛しあっているのにほかなりません。逆にうまくいかない関係は、コミュニケーションがダメなパターンに嵌まっています。口うるさい母と反抗的な子というパターンとか。そんなときには、ダメでない「かのように」。ダメなパターンを打破することができるのです。

2020年8月12日水曜日

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)

『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)を読んだ。

 超面白い。綱吉のファンになること必定。綱吉の評判が悪いのは、武士に嫌われたから。武士に嫌われたのは、儒教的仁政を理想とし、庶民を重視したから。その庶民重視の根は、当時の武士では例外的に母の影響を強く受け、母は八百屋の娘だったからです。

 また綱吉は中央集権を志向しました。家柄より能力で登用し(柳沢吉保等)、西洋史ならルイ14世風の絶対君主を目指しました。生類憐れみの令は、鷹狩りの縮小で大名が捨てた等の野良犬が十万匹も群れる江戸で、五代将軍綱吉と戦国的武士との衝突だったのです。

2020年8月11日火曜日

『秋田蘭画の近代 小田野直武「不忍池図」を読む』(今橋理子)

『秋田蘭画の近代 小田野直武「不忍池図」を読む』(今橋理子)

『秋田蘭画の近代 小田野直武「不忍池図」を読む』(今橋理子)を読んだ。

 何か妙な迫力ある美しさ、秋田蘭画。その一派は、銅山開発のため秋田藩に招聘された平賀源内が、画才ある小野田直武を見出して始まりました。鎖国下の日本で束の間花開いた、極めて前衛的な芸術家集団だったといいます。

 不忍池の歴史(日本初の公共図書館を作った了翁道覚が強烈)、蘇東坡、南蘋派など話柄豊富です。眼鏡絵(遠近法のカラクリ絵)を論じ、さらに《不忍池図》は円筒から覗いて見るのが正しいとか言う。試してみると本当に遠近感が。おみそれしました。私の気のせいかもしれず、皆様も試されたし。

 

2020年8月6日木曜日

『私はすでに死んでいる ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』(アニル・アナンサスワーミー)

『私はすでに死んでいる ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』(アニル・アナンサスワーミー)

『私はすでに死んでいる ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』(アニル・アナンサスワーミー)を読んだ。

 なぜ私は、私という意識をもっているのか。知りたい。その謎を本書は、自意識が失調する症候群から探っています。自分が死んだと思い込むコタール症候群、離人症、自閉症…。

 自意識について説得的ですが、むしろ患者の苦しみの記述が深いです。脳は恒常性維持のための器官、予測機能付きサーモスタットのようなものです。外界を観察し予測し、行動を制御します。しかし自閉症では予測がうまく働かないため、経験を毎回ゼロから受けとめることになります。「自閉症患者にとって、世界は悪い意味でマジックだ」と。

2020年8月2日日曜日

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)

『科学革命の構造』(トーマス・クーン)を読んだ。

 パラダイム転換、面白い。読む前はポストモダン的というか、科学者は集団のルール内で考えるだけだ的な本かと思ってましたが、違いました。

 確かに、「チェスの問題を解こうと苦心する人は、チェスのルールについて考えない」としています。しかしむしろ、その解こうとする苦心、パラダイム内での通常科学こそを、科学の長所と評価しています。ルールの転覆(まさにコペルニクス)は外野からは目を引きますが、そもそも転覆が可能になるのは、つまり異常に気づくのは、通常科学による蓄積があるからこそなのです。