2020年9月17日木曜日

『レトリック感覚』(佐藤信夫)

『レトリック感覚』(佐藤信夫)


『レトリック感覚』(佐藤信夫)を読んだ。

 超面白い。太宰治曰く、「ふと入口のほうを見ると、若い女のひとが、鳥の飛び立つ一瞬前のような感じで立って私を見ていた」。その比喩、わかる。けど、鳥の飛び立つ一瞬前を見たことありますか。『雪国』のヒロイン、「駒子の唇は美しい蛭の輪のように滑らかであった」。わかる。けど、蛭を見たことありますか。

 しかし、愛する人の唇を伝えたいとき、美しいと書いても、形を正確に描写しても、伝わりません。言葉は伝達に便利ではない。レトリックは飾りではなく、切実なことを正確に伝えるための本質なのです。