2022年9月3日土曜日

第27回 ビブリオバトル・テーマ「読書術」


新書読書会「連鎖堂」を開催しました。今回はビブリオバトル、テーマは「読書術」(新書限定)です。読書するからには、読書の方法もいろいろ試行錯誤したいと思うので。

 次の5冊が発表されました。

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【1冊目】
『小説読解入門 『ミドルマーチ』教養講義』(廣野由美子、中公新書)

 ジョージ・エリオットの傑作長編『ミドルマーチ』をネタに、小説の読み方、楽しみ方のコツを教えてくれる本です。まさに読み尽くすという徹底ぶりで面白い!
 前半は小説技法の解説、後半では、宗教・歴史・科学・芸術など11の分野から『ミドルマーチ』を読み解きます。
 著者曰く、「文学とは、世界のさまざまな側面を、具体的な人間の在り方の実例をとおして示しつつ、読み手の心に染み込み、変革を促すものではないだろうか。したがって、文学には、人間の生きる力の土台を形成する作用が含まれているといっても過言ではない」。グッと来ました。

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【2冊目】
『読書をする子は○○がすごい』(榎本博明、日経プレミアシリーズ)

 追跡調査によれば、小学校1年生時点での語彙力の差は、6年生になっても縮まらないとのことです。
 そうなると、子供に本を読むようになってほしい人も多いと思います。家にたくさん本があれば子供が本を読むようになると書いてあります。発表者は家に本がある環境でしたが、子供は読書好きにならなかったですが…。

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【3冊目】
『危ない読書 教養の幅を広げる「悪書」のすすめ』(佐藤優、SB新書)

 危険で刺激的な「悪書」20冊を紹介する本です。
 大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の主犯、井口俊英『告白』が面白かった。500万円の損を隠すために1000億円の損失を出してしまい、隠しきれずとうとう役員に告白の手紙を送ると、衝撃的かつ日本的なお返事が…。
 ほかにも、『レーニン主義の基礎』(スターリン)、『クーデターの技術』(クルツィオ・マラパルテ)、『わが闘争・猥褻罪 ─ 捜索逮捕歴31回』(大坪利夫)など、危険で面白そうな本が選ばれています。

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【4冊目】
『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』(西林克彦、光文社新書)

 文章がなにをいっているのかわかるのは、スキーマ(文脈、背景知識)があるからこそです。しかし、スキーマがあるからこそ逆に、文章をわかることが難しくなることもあります。わかっていないことがわからないからです。
 この本は、わかったつもりに陥る罠をたくさん示しています。例えば、昔話の影響で『夕鶴』(木下順二)も恩返しの物語と読んでしまうとか、ある登場人物がいい人だということになってしまうと当初の悪事は忘れられてしまうとか。
 わかったつもりになってないか、この本で確認しましょう。

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【5冊目】
『一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』(岩田徹、ポプラ新書)

 元炭鉱の町の本屋さんは右肩下がり、ついには弁護士に破産の相談に行くまで追い詰められますが、本屋の神様はいた! あるきっかけではじめた「一万円選書」がブレイクし、いまや予約が捌ききれないことになっているのです。
 つらいときを越えた著者が得た幸せ、「僕はこの本に一万円選書のノウハウをすべて書き込んだつもりです。それは多くの書店にこの一万円選書に取り組んでみてほしいからです」という著者のあたたかさに心を打たれます。

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 さて皆様、どの本が読みたくなりましたでしょうか? チャンプ本を発表します。チャンプ本は…。
 『わかったつもり』(光文社新書)です! おめでとうございます!

 次回は、『わかったつもり』が課題本の読書会です。読書するからには、わかったつもりからぜひ脱却したい。楽しみです。

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 写真は今回の料理、低温調理した豚バラ肉と、プチトマトマリネ。人生で始めてプチトマトを湯むきしました。けっこうおいしい。

 いやー、新書って本当にいいものですね! ではまた来月。