2022年7月2日土曜日

第26回読書会 『感情の正体』


新書読書会「連鎖堂」を開催しました。課題本は『感情の正体 発達心理学で気持ちをマネジメントする』(渡辺弥生、ちくま新書)です。

 この本は実に読書会向けの本で、参加者それぞれ印象に残ったページをあげて、その箇所について意見を述べたんですが、8人、誰ひとりとしてダブらないという・・・。人によって着目点が違うとは言いますが、ここまでとは。
しかも「感情」はやはり、何かを触発するようで、意見がとても多く出ました。進行させる側であるべき私がむしろ会話に参入しては議論を広げるので、我ながら、終わらないかと思いました。無限の読書会。読書会の進行って難しいですね。

 以下、参加者から出た意見です。

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Aさん 196ページなど
  •  ムードメーター(感情を、快不快の横軸、エネルギー高低の縦軸の、座標で表すもの)が良い。使えるのでは。「今の気分は、快不快プラス5・エネルギーマイナス2です」(心地よくてのんびりしている)とか。最近の感情語「エモい」は、このムードメーターでいえばどこになるのだろうか。

 〔ここで、「エモい」について意見多数〕

Bさん 139ページ、79ページなど
  •  子どもが「公正な分配」について話すとき、日本では、アメリカと異なり、「かわいそう」という言葉が多く発せられる。しかも日本の子どもは、「かわいそう」を、ポジティブな状況を感情で示す言葉として、「楽しい」の次くらいに多用する。これについての私の仮説は、古語では同じ語源だったことから考えても、「かわいそう」と「かわいい」とが入り交じっているからではないか。

〔ここで、ポジティブ状況での「かわいそう」について意見多数〕

Cさん 127ページなど
  •  道徳的な判断は、実は感情に基づいているという仮説があるが、やはり道徳的な判断は理性に基づいているのではないか。

 〔ここで、理性では親和性バイアス(遠くの人の大きな不幸より、近くの人の小さい不幸のほうに同情する)を説明できないのではないかなど、道徳と感情について意見多数〕

D 160ページ、157ページなど
  •  いじめられる側のファクターを分析した部分、いじめられたときに、笑ったり、怯んだりするといじめが長引くというのは、観察結果としては正しいだろうし、いじめられたら毅然と対応せよというのも正しいだろうが、対処はとても難しいだろう。

 〔ここで、いじめている側の表情と、いじめられている側の表情が、非常に似通っている(興味のような表情や、喜びのような表情が多い)ことの指摘など、いじめと感情について意見多数〕

Eさん 105ページなど
  • 「人生の残り時間が限られてきたと感じると、肯定的感情を高める行動をするようになる」「感情調整能力が成熟すると、ポジティブ感情が優位になります」という部分に、老いにも悪いことばかりではないなあと感じた。

〔ここで、参加者それぞれ自身の加齢と、感情の変化について意見多数〕

Fさん 94ページなど
  •  シャーデンフロイデは、創造性の源泉にもなる。私自身の創作物では、自分のシャーデンフロイデを分析して展開してみた。
  •  私としては、他者との関係について気持ちをマネジメントするなら交流分析(杉田峰康『講座サイコセラピー8 交流分析』など)が、お勧めです。

 〔ここで、シャーデンフロイデや妬みの有効活用について意見多数〕

Gさん 21ページなど
  •  それこそ「感情の正体」を記載しているはずの図1(「怖いから逃げるのか、逃げるから怖いのか」)について、「意識」につながる矢印は、何を示しているのだろうか。因果関係なのか、時間的順序なのか、それ以外の何かなのか。これがはっきりしないと、「感情の正体」は分からないのでは。

 〔ここで、スピノザ的な平行説や、「構成主義的情動理論」など、感情がどう生じるのかについて意見多数〕

Hさん 42ページ、55ページなど
  •  小学生を教えていたとき、感情語を教える授業は盛り上がった。
  •  授業で、「がんばって勉強した友だちより、がんばらなかった自分のほうがテストの点が良かったときの気持ち」について話してみると、小学校中学年以上の子は「嬉しいけど後ろめたい」などプラスとマイナスが混在する感情が把握できる。

 〔ここで、入り交じった気持ちについて意見多数〕

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 いやー、読書会っていいですね!

 料理のほうは今回は爽やか味を狙ってポークをマリネにしてみたんですが、うーん、脂と当日の暑さのほうがまさっていたか。うなりをあげる脂まみれ豚バラ肉の山!

 では次回も、いい新書とともにお会いしましょう!