2021年1月28日木曜日

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)を読んだ。

 効果的なダイエット法は、甘い飲物の原則排除(果物は身体にいいのに、なんと天然果汁はよくない)。あと、小腹が空いたらナッツ。

 ブドウ糖(米などから摂取)と異なり、果糖(主に砂糖から摂取)はアルコールと同じく肝臓でしか分解されないため、処理限界を超えがち。超えるとインスリンの効きが弱まります。すると脳は飢餓状態とみなして、活動量を減らし、脂肪を貯めます。つまり果糖が多すぎると、なんということでしょう、太っても太っても飢餓状態。肥満は意思が弱いというより、バランスの崩れなのです。

2021年1月23日土曜日

第11回読書会 ビブリオバトル・テーマ「現代アメリカ」


新書読書会「連鎖堂」を開催しました。今回はビブリオバトル。テーマは「現代アメリカ」(新書限定)です。

 アメリカはいったい、どうしたというのか。そしてこの先、どうなっていくのか。うーん、いいテーマですね。

 参加は少人数4名ですが、全員発表で、以下の4冊が紹介されました。

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 『宗教国家アメリカのふしぎな論理』(森本あんり、NHK出版新書)

 トランプは決して特異な例外ではない。なぜなら、アメリカには反知性主義の伝統があるからです。伝道集会やラジオで熱く語る牧師など、アメリカの宗教的熱狂は強い。これが大統領選にも、ショービジネスにもつながってきました。
 本書によれば、反知性主義はこれまで長続きしたことはないというのですが…。

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 『アメリカン・デモクラシーの逆説』(渡辺靖、岩波新書)

 アメリカの大本は、ビジネスにある。戦争の裏側にビジネス、銃の裏側にビジネス、そしてもちろん、大統領選の裏側にビジネスです。大統領選はそれ自体がビッグ・イベントですし、大口献金者に見返りがあるというビジネスでもあります。
 プラス面を見れば、アメリカには自分でやるという気概があります。マイナス面を見れば、弱肉強食になってしまうというのです。

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 『トランプのアメリカに住む』(吉見俊哉、岩波新書)

 トランプ当選後のアメリカで暮らした学者の、アメリカ観察記録です。
 例えば「性と銃のトライアングル」の章は、MeToo運動と銃乱射事件の背景を探るもの。アメリカはそのはじめから暴力によって成立した国家で、マチズモ的な価値観への肯定がある。これへの反旗と、歪んだ噴出が、MeToo運動と銃乱射事件だというのです。

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 『ルポ 不法移民とトランプの闘い』(田原徳容、光文社新書)

 良質なジャーナリズムです。まずは事実を知らなければ、話は始まらない。読売新聞記者の、不法移民への考え方、その揺れ動きを、ぜひ追体験されたい。
 不法移民は不法ですが、不法と悪はイコールではない。本書の豊富な事例を読んだ後に、不法移民をどう思うことになるのか、ぜひ体験されたい。

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 さてこの4冊、どれも面白そうですが、みなさまがたは、どの本をいちばん読みたくなりましたでしょうか?
 では、チャンプ本の発表です!

 …。

 なんと今回は、
 『宗教国家アメリカのふしぎな論理』(森本あんり)
 『ルポ 不法移民とトランプの闘い』(田原徳容)
 の2冊が同票、しかも決選投票も同票で決着つかず、しかし次回読む本を決めなければならないのでジャンケンの結果…、

 チャンプ本は、
 『ルポ 不法移民とトランプの闘い』(田原徳容)になりました!
 おめでとうございます!

 楽しかった! 次回は、『ルポ 不法移民とトランプの闘い』を課題本とする読書会です。

 では来月も、いい新書とともに、お会いしましょう。

2021年1月22日金曜日

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)を読んだ。

 著者はゲーム理論やパレート最適を丁寧に検討していきますが、どうもうまく現実を説明できません。そして気づくのでした。経済学は根本から間違ってると。

 経済学は丸ごと、人が自己利益の最大化を求めるという仮説の上に乗ってます。しかし実際、我々はさほど利己的ではありません。なのに利己心仮説が説明原理として普及すると、他人に利己心仮説を適用し、自分だけ取り残される恐怖が生じ、嫌々ながら利己的に選択してしまう。しかし利己心仮説が幻影ならば、そんなのは怯えて何でも怖がってるも同然なのです。

2021年1月16日土曜日

『たとえる技術』(せきしろ)

『たとえる技術』(せきしろ)

『たとえる技術』(せきしろ)を読んだ。

 サプライズでプレゼントをもらった。嬉しい。「とても嬉しいです」よりもっと、嬉しさを伝えたい。そんなときは、喩えましょう。

 「『この犬、他の人に懐くこと滅多にないのよ』と言われたときのようにうれしいです」「大浴場に自分ひとりだけだったときのようにうれしいです」「席替えで窓際になったときのようにうれしいです」。本書には秀逸な喩えが満載です。読めば自分でも喩えたくなります。そこで私から一つ。「珍しい料理の名前を自分だけが知っていたときのようにうれしいです」。皆様も、嬉しさを是非。

2021年1月5日火曜日

『ニュータウンの社会史』(金子淳)

『ニュータウンの社会史』(金子淳)

『ニュータウンの社会史』(金子淳)を読んだ。

 ニュータウンはなぜかいつも病理扱い。そんななか本書はニュータウン側に立ってますので、個人的にはグッと来ます。第一次入居者の苦労とか、懐かしい。あのころ本当に、何もなかった。

 しかし具体的なので、逆に深い批判になっています。つまり、別のあり方もありえた。新住宅市街地開発法は農業を根こそぎにし、(86年の改正まで)職場すら原則禁止しました。その結果が広大な「無産業地帯」。なぜ職場を作らなかったのか。「『乱開発の防止』という名の地域社会の『乱開発』以外のなにものでもなかった」と。