2021年9月20日月曜日

『科学の発見』(スティーヴン・ワインバーグ)

『科学の発見』(スティーヴン・ワインバーグ)

『科学の発見』(スティーヴン・ワインバーグ)を読んだ。

 ニュートンはリンゴが落ちるのを見て重力を発見した、って、ちょっと何言ってるか分からない。本当はこう。

 ケプラーは水金火木土星全て、公転周期の2乗が太陽との距離の3乗に比例することを発見していました。またニュートンは円運動で生じる中心へ引く力(向心加速度)を解明しました。式を変形すると、太陽が惑星を引く力は距離2乗の反比例で弱まる。ここで地球が月を引く力と、地表の重力加速度も、おお、地球中心からの距離2乗の反比例で弱まってる。なんと太陽も地球も引く力は同様だ。重力を発見した!

2021年9月13日月曜日

『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』(エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト)

『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』(エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト)

『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』(エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト)を読んだ。

 我が子の勉強や、従業員の仕事の質を上げるため、どうやって動機づけるか。そういう問題の立て方、のっけから断然間違ってます。なんとなれば、逆から考えろ。他人から動機付けされたら、やる気、出ないでしょう。研究によれば、「したくないだろうとも、してもらいたい」と、矛盾を正直に認めたほうが、自律性が阻害されにくいのです。

 その他、報酬を設定されると、やる気が削がれることがある。競争を設定されると、サクラで勝たせても、やる気が削がれることがある。人をなめたらアカン、と思ったことでした。

2021年9月8日水曜日

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)

『創造的破壊 グローバル文化経済学とコンテンツ産業』(タイラー・コーエン)を読んだ。

 考えさせる力が強い本です。グローバル経済は世界各地の文化的独自性を、現実に削いでいる。では、ハリウッド映画やショッピングモールは悪か。

 例えばパプアにモールができれば、パプアの独自性は失われ、美術コレクターの選択肢は狭まるでしょう。しかし、パプア人の選択肢を狭いままにしておけというのは正しくない。また、「社会集団間の多様性」が減っても、「社会内部の個人にとっての多様性」は増えうるし、そのほうが人々が自分に噛み合う文化を獲得しやすい。現に狭くても深い文化は増えている、という。

2021年9月1日水曜日

『AI原論 神の支配と人間の自由』(西垣通)

『AI原論 神の支配と人間の自由』(西垣通)

『AI原論 神の支配と人間の自由』(西垣通)を読んだ。

 哲学的に、AIと生命は別物。面白い。けど同意できない。生命は全く新しい状況でも生き抜こうとする。そのとき、自分でもどう動くか計算できない。対してAIは、常に過去の確率に従う。複雑でも原理的にはどう動くか計算できる。「不可知であることが、生命体の本質なのである」。

 うーん、不可知はそんなに「本質」か。蝶の動きが予測不能なのは補食されないため(D・デネット)。ありふれたシステムの振る舞いでも予測不能になりうる(前野隆司)。だったらAIも、自己保存するなら不可知になりうるのでは。

2021年8月30日月曜日

『フランス革命 歴史における劇薬』(遅塚忠躬)

『フランス革命 歴史における劇薬』(遅塚忠躬)

『フランス革命 歴史における劇薬』(遅塚忠躬)を読んだ。

 超面白い。歴史の本質まで迫る勢いです。フランス革命は要するに血まみれの大惨事であり、恐怖政治は半年で4万人を殺し、続く内乱では30万人が死亡しました。「人間は、生まれながらにして、自由であり、権利において平等である」とする人権宣言から、数年後には恐怖政治。なぜそうなるか。

 革命の前半は良く、後半暴走したと解するのがありがちですが、そんなのは事実に反します。男子普通選挙が実現したのも、生存権が登場したのも、恐怖政治下です。人権宣言も恐怖政治も、一体としてフランス革命なのです。

2021年3月4日木曜日

『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(山田奨治)

『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(山田奨治)

『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(山田奨治)を読んだ。

 日本の著作権法の法定刑は、世界で一番厳しい。なんと窃盗と同等です。盗みは誰でも悪いと思うでしょうが、コピーを配るのが同じくらい悪いのか。著作権法の第一人者、中山信弘曰く、「法改正としては極めて遺憾である」。本書では、法改正が実際いかになされているかを観察できます。

 文化の創成と拡散にとって、コピーは不可欠な要素です。ところが業界側は、文化を商品カテゴリーの一種だと思っています。そして、普通の人がやっていることを犯罪にしようとしています。法で犯罪を創る。それは法匪の発想です。

2021年2月23日火曜日

『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』(三中信宏)

『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』(三中信宏)

『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』(三中信宏)を読んだ。

 面白い。新しい思考方法を獲得できます。演繹・帰納ではない、第三の推論様式を。

 進化や歴史には、再現も実験もありません。ではそれは科学ではないのか。しかし進化や歴史にも、説の善し悪し、つまり仮説選択基準があるはず。それが系統樹思考です。不動の真偽を定めるのではなく、仮説を果てしなく吟味し続けるのです。進化の木、語族の枝分かれ、写本の系統、不幸の手紙の来歴、等々。さらに目覚ましいことに、時が止まった真偽の世界と違い、系統樹思考は時を扱えます。系統樹から時が流れ出すというのです。

2021年2月22日月曜日

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)

『カブーム! 100万人が熱狂したコミュニティ再生プロジェクト』(ダレル・ハモンド)を読んだ。

 面白い。アメリカの低所得地域には公園がないか、あっても危険です。そこにNPOカブーム!は2千以上の子ども公園を作り、その9割近くを持続させてきました。公共の難題を解決するには、工夫と情熱が両方必要だと、強く思ったことでした。

 工夫は「ビルド・デイ」。数百人のボランティアを集め、公園を1日で完成させるのです。これにより全ボランティアが「自分たちで作った」と思い、公園が、そしてコミュニティが、続いていくのです。そして情熱。著者の生い立ちも、立ち上げ期も発展も、とても力強いです。

2021年2月18日木曜日

『荒くれ漁師をたばねる力』(坪内知佳)

『荒くれ漁師をたばねる力』(坪内知佳)

『荒くれ漁師をたばねる力』(坪内知佳)を読んだ。

 面白い。読みやすい。著者はシングルマザーとして実家もない萩で翻訳などしていましたが、たまたま六次産業化法の申請を手伝ったことから船団代表となり、鰺と鯖以外の混獲魚を「鮮魚BOX」として料亭に直売する認定を得ました。

 ところが一元出荷を謳う漁協からの反対、どころか「潰してやる」「小娘のくせに生意気なんじゃ」という怒号を乗り越える著者、強い。北新地の料亭への営業も、一回の出張で多く回るため、途中で食べたものを吐き戻す凄絶さ。何かを変えるのに、根性が大事なのは当たり前じゃないか。

2021年2月8日月曜日

『ホモ・ルーデンス』(ヨハン・ホイジンガ)

『ホモ・ルーデンス』(ヨハン・ホイジンガ)

『ホモ・ルーデンス』(ヨハン・ホイジンガ)を読んだ。

 遊びは、文化や言葉よりも古い。なんとなれば、動物も遊びますから。遊びは、それよりも根源的な概念に還元できないのです。遊びは遊びのためにあり、何かのための遊びなんて違う。教育のためのゲームとか、学びのためのアクティビティとか、違うのです。

 ホイジンガの観察によれば、遊びとは、①自発的で、②日常生活から切り離され、③いったん受け入れた以上は絶対的なルールに従い、④緊張と歓びの感情を伴うもの。自発的、非日常、ルール、緊張と歓び。なんとこれは、ビブリオバトルそのものではないですか。

2021年2月1日月曜日

『法哲学と法哲学の対話』(安藤馨、大屋雄裕)

『法哲学と法哲学の対話』(安藤馨、大屋雄裕)

『法哲学と法哲学の対話』(安藤馨、大屋雄裕)を読んだ。

 最高に面白い。雑誌「法学教室」に連載され、初学者に法哲学を概説しようという企画ですが、そんな学習的配慮、瞬く間に粉微塵。法哲学者双璧による、全開の討論です。とても説得的と感じた立論が20ページ後には根こそぎ覆される、目も覚める体験を。

 最終章(法哲学と憲法)のタイトルは「最高ですか?」。憲法は98条で「国の最高法規」と規定しますが、最高って言ってればそれだけで「最高ですか?」。そんなのはあの教祖とどう違うのか。つまり、法はなぜ守られるべきなのか。うーん実に、「最高です!」

2021年1月28日木曜日

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)

『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ)を読んだ。

 効果的なダイエット法は、甘い飲物の原則排除(果物は身体にいいのに、なんと天然果汁はよくない)。あと、小腹が空いたらナッツ。

 ブドウ糖(米などから摂取)と異なり、果糖(主に砂糖から摂取)はアルコールと同じく肝臓でしか分解されないため、処理限界を超えがち。超えるとインスリンの効きが弱まります。すると脳は飢餓状態とみなして、活動量を減らし、脂肪を貯めます。つまり果糖が多すぎると、なんということでしょう、太っても太っても飢餓状態。肥満は意思が弱いというより、バランスの崩れなのです。

2021年1月22日金曜日

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)

『「きめ方」の論理 社会的決定理論への招待』(佐伯胖)を読んだ。

 著者はゲーム理論やパレート最適を丁寧に検討していきますが、どうもうまく現実を説明できません。そして気づくのでした。経済学は根本から間違ってると。

 経済学は丸ごと、人が自己利益の最大化を求めるという仮説の上に乗ってます。しかし実際、我々はさほど利己的ではありません。なのに利己心仮説が説明原理として普及すると、他人に利己心仮説を適用し、自分だけ取り残される恐怖が生じ、嫌々ながら利己的に選択してしまう。しかし利己心仮説が幻影ならば、そんなのは怯えて何でも怖がってるも同然なのです。

2021年1月16日土曜日

『たとえる技術』(せきしろ)

『たとえる技術』(せきしろ)

『たとえる技術』(せきしろ)を読んだ。

 サプライズでプレゼントをもらった。嬉しい。「とても嬉しいです」よりもっと、嬉しさを伝えたい。そんなときは、喩えましょう。

 「『この犬、他の人に懐くこと滅多にないのよ』と言われたときのようにうれしいです」「大浴場に自分ひとりだけだったときのようにうれしいです」「席替えで窓際になったときのようにうれしいです」。本書には秀逸な喩えが満載です。読めば自分でも喩えたくなります。そこで私から一つ。「珍しい料理の名前を自分だけが知っていたときのようにうれしいです」。皆様も、嬉しさを是非。

2021年1月5日火曜日

『ニュータウンの社会史』(金子淳)

『ニュータウンの社会史』(金子淳)

『ニュータウンの社会史』(金子淳)を読んだ。

 ニュータウンはなぜかいつも病理扱い。そんななか本書はニュータウン側に立ってますので、個人的にはグッと来ます。第一次入居者の苦労とか、懐かしい。あのころ本当に、何もなかった。

 しかし具体的なので、逆に深い批判になっています。つまり、別のあり方もありえた。新住宅市街地開発法は農業を根こそぎにし、(86年の改正まで)職場すら原則禁止しました。その結果が広大な「無産業地帯」。なぜ職場を作らなかったのか。「『乱開発の防止』という名の地域社会の『乱開発』以外のなにものでもなかった」と。